[ オピニオン ]
(2016/9/30 05:00)
伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に関連した閣僚会合のうち、神戸市では主要7カ国(G7)保健相会合が開かれた。これを一過性のイベントで終わらせないために、医療産業都市・地域としての発信力を強めていく必要がある。
神戸は1995年の阪神・淡路大震災からの復興や、人工島ポートアイランドで展開する国内最大級のバイオメディカルクラスター「神戸医療産業都市」の取り組みが高く評価され、開催地に選ばれた。
9月11、12日の会合では各国の閣僚がエボラ出血熱、ジカ熱などへの対応や、抗生物質が効かなくなる薬剤耐性対策、誰でも負担可能な費用で医療や保健サービスを受けられる仕組みづくりを議論。成果を盛り込んだ「神戸宣言」を採択した。
さらに閣僚らはiPS細胞(人工多能性幹細胞)の臨床応用を手がける研究拠点やスーパーコンピューター「京」も視察。一般向けにも「ひょうごKOBE医療健康フェア」などの関連イベントを開くなど、医療産業都市としての神戸の魅力を内外にアピールした。
神戸市の久元喜造市長は「神戸宣言」を踏まえて、市独自の取り組みを発表。世界保健機関(WHO)の神戸センターや神戸大学などが進める認知症の早期発見・早期介入を目指すプロジェクトに協力し、高齢者のデータを提供する。また新たな認知症の事故救済制度を検討する。
さらにITを活用して感染症の管理体制を強化。保健師や感染症の訪問指導員にタブレット端末を持たせ、感染症の発生場所のトイレや台所などを撮影して画像を送り、関係機関や医師とやりとりしながら対応する仕組みを構築する。
兵庫県の井戸敏三知事も「これからも全国に先駆けた取り組みを進める」とコメントし、講演会やシンポジウムを通じて次代を担う人材の育成に挑む。
サミットのようなイベントは一時的な盛り上がりで終わりがちだ。地域の特性を発揮していくためには会合の閉幕後、独自の取り組みをどれだけ続けられるかが重要になる。
(2016/9/30 05:00)