[ オピニオン ]
(2016/10/25 05:00)
「秋晴の勝利の腿(もも)を叩(たた)きけり」。愛媛県体育協会が、スポーツと文化を融合した新たな芸術文化として発信する「えひめスポーツ俳句大賞」の2014年度受賞作だ。全力を傾けて成果を収めた達成感が伝わってくる。
スポーツに勝ち負けはつきものだが、科学技術ではどうか。今年のノーベル賞の生理学医学賞は大隅良典東京工業大学栄誉教授が単独で受賞する。銀も銅もいない堂々の金メダル。最大3人の枠の中で、大隅さんの成果は他を寄せつけないほど独創的と判定された。
常に判定が明確とは限らない。今年のノーベル物理学賞は元東京大学准教授の甲元眞人さん、化学賞は九州大学名誉教授の新海征治さんが共同受賞者に名を連ねてもおかしくなかったと言われる。
受賞の時期やテーマの焦点をどこにおくかで、貢献した研究者は変わってくる。同分野で独創的な成果を挙げても受賞に至らない“4人目の候補者”は、実は珍しくない。日本人研究者の層の厚さが誇らしくもあり、また悔しくもあり。
オリンピックは8位までが入賞だが、メダルとの差は歴然としている。それでも同じレースなら勝敗は爽やかに決まる。なかなか簡単には決められないところが、科学技術の奥深さであろうか。
(2016/10/25 05:00)