[ 機械 ]
(2016/10/25 14:30)
電子部品や医療機器などさまざまな工業製品の小型・高機能化が進み、その構造や材質も複雑・多様化している。これに伴い、ドリルを利用した小径・深穴あけ加工技術も進化しており、これまで困難とされていた微細穴や深穴の高速・安定加工が可能となってきている。製造現場の競争力強化にも大きく寄与している。
製造現場の競争力強化―微細穴・高速加工も可能に
広がる領域
ITや医療、産業機械分野などでの機器の急速な小型・高機能化により、これらの製造過程で微細な穴加工が増大している。このため、高精度で効率的な穴あけができるドリル加工へのニーズが強まっており、技術の活躍領域は着実に広がっている。
これまで穴加工にはガンドリルをはじめとする専用機のほか、放電加工機、レーザー加工機などが使われてきた。ただ、効率化の観点から生産ラインの変更にも対応しやすい汎用的な機械と組み合わせて短時間で加工することが重要視されるようになっている。ドリルを用いて加工すれば熱などによる被加工材への影響が少なく、加工対象となる素材の幅も広がる。
ドリルは直径2ミリ―3ミリメートル以下を小径、これより小さいものは微小径や極小径などと区別されることが多いようだ。深穴あけ加工は穴の直径に対する切削長さが大きくなるほど切りくずの排出抵抗が高まり、加工に困難が伴う。また発生する熱がこもりやすくなり、工具寿命が急速に短くなるといわれている。
ドリルの進化
こうした課題を解決するため、ドリルの進化が続いている。工具メーカーでは刃先や溝の形状を最適化して切りくずの分断性や排出性を向上した製品のほか、母材の超硬材に独自コーティングを施して耐熱性や耐摩耗性をアップした製品などを次々と市場に投入している。4月にインテックス大阪(大阪市住之江区)で開催された「インターモールド2016(第27回金型加工技術展)」にも工具メーカーが数多く出展。工程短縮や効率化、高精度化をサポートする最先端の工具や加工技術などを提案した。
ドリル自体の改良に加え、工作機械の発達や保持具、切削手法の工夫もあって工具寿命が延び小径でも安定して深穴をあけられるようになっている。以前は加工穴径に対する深さは10倍程度が限界だった。それが最近では0・5ミリメートル以下の穴でも100倍程度まで加工できるドリルが数多く登場している。またオイルホール付きドリルでは標準的な径で20―30倍の深さの加工に対応する製品が各メーカーから販売されている。
市場動向・ニーズに対応
材料も多様化
一方で加工の対象となる材料も多様化している。耐熱合金やチタン系金属、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など難加工材は自動車や航空機分野を中心に軽量化・強度確保などを目指して採用が拡大している。
特にCFRPへの穴あけは炭素繊維の積層間剥離やバリが発生しやすく難しい。このため、工具メーカーはダイヤモンドコーティングを施したドリルや、先端に焼結ダイヤモンド(PCD)を採用した製品を積極的に開発・提案している。これらにより、切削の抵抗減少や耐摩耗性向上への対応を進めている。
情報家電や医療機器、自動車部品などさまざまな工業製品の軽薄短小化は今後ますます加速するとみられる。このため、小径加工や深穴加工に使用されるドリルも高性能化が進みそうだ。工具メーカーの取り組みも活発で、これまで微小径サイズのドリルの品ぞろえに力を注いできた。
設備や加工対象となる素材、また製品そのものが進化している。こうした状況にあるなかで、付加価値向上などモノづくり企業のニーズや市場の動向にいかに対応していくか、これが小径・深穴あけ加工技術の可能性を広げるポイントとなりそうだ。
(2016/10/25 14:30)