[ 政治・経済 ]
(2016/11/9 16:30)
(ブルームバーグ)9日の東京株式相場は大幅安。事前予想に反し、米国大統領選の開票速報で共和党のドナルド・トランプ候補が優勢となり、米政治経済の混迷や日米関係への悪影響が警戒された。急激な円高も嫌気され、輸送用機器など輸出株、証券や銀行など金融株中心に東証1部33業種は全て安い。
TOPIXの終値は前日比62.33ポイント(4.6%)安の1301.16と3日ぶりの下げで、 日経平均株価は919円84銭(5.4%)安の1万6251円54銭と続落。日経平均は一時1000円以上下落し、下げ幅は英国の欧州連合(EU)離脱選択を受けた6月24日(1286円)以来、およそ4カ月半ぶりの大きさとなった。
ニッセイアセットマネジメントの 久保功株式ストラテジストは、「トランプ氏が米大統領に就任した場合、政策の不透明感がある。ドル安誘導で日本にとって厳しいとの見方もあるため、選挙前に円安を材料に上げた分の反動が出た」とみていた。
8日に投票が行われた米大統領選の開票作業は、日本時間午後3時時点で終盤を迎えた。開票序盤は波乱なしと受け止められ、為替は一時1ドル=105円台、日経平均は256円高まで買われたが、徐々にトランプ候補の獲得選挙人数が増えると、為替、株式は乱高下。午前後半以降はTOPIX、日経平均とも下げ足を速めた。
午後3時現在の獲得選挙人の速報は、共和党のトランプ候補が244人、民主党のヒラリー・クリントン候補が215人となっている。
この日の日本株は、米スレート誌の投票分析予想「ボートキャスター」でクリントン候補が重要州で優位と 伝わり、上昇して開始。しかし、午前11時を過ぎてもトランプ候補の優勢が継続すると、投資家の間でリスク回避ムードが一挙に拡大した。午後に入り、ドル・円は一時101円20銭台まで円が急伸。昼休み中の大阪取引所の先物が売り込まれた流れから、日経平均も午後に一段安、一時1059円安まであった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の 藤戸則弘投資情報部長は、トランプ大統領誕生なら「マーケットの問題にとどまらず、日本の安全保障、外交上の問題も一気に五里霧中になる。BRXITと全くレベルが違い、短期で戻るとは考えられない」と分析。ヘッジファンドなど短期資金にとどまらず、「国内外の年金からもヘッジ売りが入ってくる見通しで、世界的に急転直下のリスクオフに傾く」と警戒している。
大和証券投資戦略部の 木野内栄治チーフテクニカルアナリストは、日経平均の下値めどは1万5700円と予想。通常の突っ込み警戒感が台頭する5週移動平均線からのマイナス乖離(かいり)率8%程度の水準が想定される、との認識を示した。
東証1部の売買高は38億1019万株、売買代金は3兆9243億円とそれぞれ前日から2.3倍、2.2倍に膨らんだ。代金は、株価指数オプションの特別清算値(SQ)算出も絡んだ2月12日(4兆1834億円)以来、ことし3番目の大商い。値上がり銘柄数は43にとどまり、値下がりは1934。
東証1部33業種は全て下落し、輸送用機器や海運、証券・商品先物取引、鉄鋼、ガラス・土石製品、繊維、銀行、精密機器、保険、ゴム製品が下落率上位に並んだ。 売買代金上位ではトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ、任天堂、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、富士重工業、ソニー、ファナック、野村ホールディングス、新日鉄住金、ニコンなどが軒並み大幅安。今期の営業利益計画を下方修正したクボタも売り込まれた。
(2016/11/9 16:30)