[ 金融・商況 ]
(2016/11/16 05:00)
ドナルド・トランプ次期米大統領は金融規制を緩和するのか。共和党やトランプ氏は選挙期間中にドッド・フランク法(金融規制改革法)の撤廃や大幅修正を示唆しており、米国では銀行株は軒並み上昇している。日本の金融機関も注視しているが、民主党の反発も強く、現実路線への修正を余儀なくされる可能性が高い。(栗下直也)
「民主党のクリントン氏が勝った場合、リスクが最も高いのは米国の銀行ともされてきた」(メガバンク関係者)。
民主党は金融機関の投機取引に新たな税金を課す枠組みの導入を検討。金融機関を再編解体する権限を規制当局に与えることも示唆していた。
共和党と民主党の大きな違いが、ドッド・フランク法に対する姿勢だ。同法はリーマン・ショック後に定められ、重要な金融機関への規制を強化し、金融機関のリスク管理やコンプライアンスが厳格化された。
民主党は同法を強化する方針だったが、共和党は過剰規制が経済の低成長の一因とみなしていた。トランプ氏も撤廃、もしくは大幅修正する方向性を示していた。
実現すれば大手銀行への追い風にもなるが、トランプ氏は選挙の終盤戦に金融政策への言及がほぼなくなったため、先行きは不透明になった。
市場では、現実的な変更としては米連邦準備制度理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)の対象となる金融機関の資産規模の下限を500億ドルから引き上げる案が浮上していた。現在の規制では、多くの中規模銀行がストレステストを受けなければならない。
ただ、撤廃には民主党の反発も強く、路線の修正を迫られそうだ。12日発行の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはトランプ氏へのインタビューを通じて、同法の完全撤廃への見通しが後退していると報じた。巨大ノンバンクに厳しい資本規制を課す仕組みなど一部の項目の見直しにとどまる可能性が高いという。
日本の金融業界からも4―9月期の決算会見で慎重な意見が相次ぐ。
みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は、トランプ氏の支持層からして「(ウォール街よりの金融緩和の方向性が)すぐに口から出るとは考えにくい」と指摘。三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長はトランプ氏がドッド・フランク法を見直す一方で、共和党が銀行と証券を分離するグラス・スティーガル法を復活させる公約を掲げていることで「やや矛盾している」と述べた。
三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長は「どこの金融機関が規制緩和されるのか。国内外で扱いが違うのかが重要」とトランプ氏の保護主義的な主張が外資金融に不利に働く可能性も示唆した。
とはいえ、北米はメガバンクにとって重要な市場。公約通りインフラ投資などの景気刺激策が打ち出されれば、各社にとって「追い風になる」(宮田社長)。公約の実現は不透明だが、新政権の組閣が固まり次第、各行は北米戦略を再策定する意向だ。
(2016/11/16 05:00)
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