[ オピニオン ]
(2016/12/9 05:00)
与党の2017年度税制改正大綱がまとまった。「働き方改革」を進めようという意志は伝わるが、力不足ではないか。また経済成長に向けた目配りも不十分に思える。
最大の焦点は、配偶者控除の見直しだった。大綱では、いわゆる「年収103万円の壁」を150万円に拡大することを決めた。分かりやすくイメージすれば、家計を助けるための妻のパートの時間を何割か増やしても夫の扶養から外れない。
しかしこうしたケースで妻の収入が増えれば、新たに所得税や住民税の所得割が発生する可能性が高い。また週20時間以上の勤務など一定条件に達すれば、年収が150万円未満でも健康保険や厚生年金に加入しなければならないケースが増えており、社会保険料の負担が新たに加わる。
主婦に限らないが、パートなど非正規の労働者をフルタイム労働者に変えるためには、時給の引き上げなどで負担増を上回るメリットを示す必要があろう。税ですべてを解決することはできないが、今回改正の控除の見直しは、専業主婦のささやかな副業を増やす程度の効果にとどまる。
また今後、数年をかけて控除制度を見直し、高所得層の負担を増やすという方針は基本的には誤っていない。ただ個人の生活様式は多様化しており、収入側で一律に税を決めるより消費に応じて課税する仕組みが有利なことは、すでに先進各国の共通認識だ。消費増税の確実な実現の方が、はるかに明解かつ効果的な施策だろう。
企業課税では、産業界が要望する研究開発減税を実現したことは評価できる。また国際的な課税逃れに対する対策も必要な制度といえる。
ただ全体に、経済成長に向けた力強さが欠けている。本来は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の中核に成長戦略があり、その戦略を推進するための税制が整備されるべきだ。税制大綱がそうした望ましい姿にならないのは、成長戦略が行き詰まり、本筋を見失っているからに他ならない。
(2016/12/9 05:00)
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