[ ロボット ]

【電子版】TheROBOT特集(3)IoT時代のサービスロボットに期待する本当の役割

(2016/12/9 11:30)

■全国600の高齢者福祉施設で活用されるコミュニケーションロボット■富士ソフト(上)

全国600もの高齢者福祉施設で導入されるコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)は、本体に搭載の人工知能(AI)とクラウド上のAIを活用しながら人とコミュニケーションする。会話を主体に相手の表情や声質からテンションを分析し、新たな提案へとつなげるデータを蓄積できる。

  • スムーズな会話や動作で人とコミュニケーションする「PALRO(パルロ)」

富士ソフトは、長年培ったソフトウェア開発技術と大学などの教育機関や研究機関との知能化技術研究を経て2008年頃からコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」の開発を始め、2010 年3 月に教育機関向けに「アカデミックシリーズ」を発売した。さらに2012年6月にB to B用の「PALROビジネスシリーズ」を市場投入し、現在までに全国600 の高齢者福祉施設にPALROを納入している。

PALRO 本体のAI とクラウドAI のハイブリッド構造

PALRO は、全長40センチメートル、重さ1.8キログラムとコンパクトであり、テーブルの上に置くと人間の顔を自然と見上げるような姿勢を取る。そして常に相手を正面から見つめながら会話する。人間同士の会話は相手の目を見て話すのが基本的マナーであり、会話中に顔や目線を逸らせば相手に不快な思いを与えてしまう。それに倣いPALROも常に相手の正面を向いて会話する。

また、PALROは動く相手(人間)の顔を常に追従する。というのも会話中の人間は絶えず動き、わずか0.3秒で首ひとつ分の横移動をする。そうした動きについていけなければ、相手の顔を見失ってキョロキョロしてしまい会話など成立しない。そこでPALROは人より狭い視野を補うために周囲を3Dマッピング化する。また、マイクと超音波センサーにより、相手の位置や音源の方向、距離を判断し、相手の顔を素早く視野の中心に捉えることを可能にする。

PALROは本体に人工知能(AI)を搭載している。これを「フロントエンドAI」と呼ぶが、PALROはフロントエンドAIで人の顔と名前を覚えて呼びかけたり、顔の追従や会話を可能としている。このフロントエンドAI を補足するのがクラウド上のAI だ。たとえば、言葉やデータの複雑な分析、解釈、演算処理などはクラウドAI で対応する。

このようにPALRO は、このフロントエンドとクラウドの2 つのAI を活用するハイブリッドAI 構造になっている。

違和感のない会話を制御するフロントエンドAI

  • PALROは、本体のAIをクラウドAIで補足するハイブリッドAI構造

富士ソフトが開発した独自技術のフロントエンドAIは、人に対するPALROのコミュニケーション行動を最適に制御する。つまり、相手としっかり向き合い、言葉を発する際は適切な間や抑揚を保ち、話の内容に適したタイミングでテンポよく身振り手振りをする。

さらに、相手の趣味・嗜好などを記憶し、過去の知識、経験を踏まえながら会話する。こうしたコミュニケーション行動は、相手に安心感をもたらし、人間らしい会話感を出すことにつながる。それを司るのがフロントエンドAIであり、人同士の会話のような違和感のない会話をPALROにさせている。

たとえば、「天気を教えて?」とPALROに話しかけると0.4秒で「天気ですね」と答える。会話では応答時間の長短がコミュニケーションの円滑さを左右する。会話しているロボットの発話に少しでも間があけば、人は会話が嫌になり止めてしまう。しかし、フロントエンドAI ならば相手の話しかけに短い応答時間で対応できる。また、話の中で必要と思われる詳細な情報はクラウドAIに随時アクセスしながら会話を続けていく。

次ページ「高齢者福祉施設で活用されるPALRO ビジネスシリーズ」

(2016/12/9 11:30)

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