[ オピニオン ]
(2016/12/21 05:00)
政府による産学共同研究の強化に向けた指針がまとまった。海外の先進大学に多く流れている企業資金を、国内回帰させる手だてとして期待される。
2016年は企業と大学・国立研究開発法人の組織連携が例年以上に目立った。この背景には“官民対話”を通じて15年末に決まった「第5期科学技術基本計画」が動き出したことがある。6月には政府が成長戦略で「25年度までに企業から大学・国立研究開発法人への投資を3倍に」と目標を掲げた。
産学共同研究の新たな指針は、文部科学省と経済産業省が共同で設置した「イノベーション促進産学官対話会議」がまとめたものだ。同会議は内山田竹志トヨタ自動車会長と五神真東京大学総長が議長となり、産・学・官それぞれのトップが顔を並べる。それだけに新方針の実効性が期待できる。
従来、日本の大企業は「欧米の先進大学には高額の産学共同研究費を出すが、国内の大学には少額でとどめる」(政府関係者)という傾向があった。海外の大学は成果創出の約束や進行管理がしっかりしており、企業から見て投資に値する。
これに対して日本の共同研究は大学の個別研究室が相手。成果が出なくても仕方がないとの感覚が抜けないという。これが産業界の不満であり、取り組みが小規模に終わる理由だった。
状況を変えるためのキーワードは「組織的、本格的、大型の産学連携」だ。指針では本部の管理体制強化と研究を支える間接経費の積算、営業秘密などのリスクマネジメントに言及。産学共同研究での多様な課題を解決し、互いの信頼を獲得する具体策を挙げている。
指針が対象としているのは、規模の大きな企業や研究機関だけではない。事例集には地方や私立の大学も取り上げ、幅広い層の参加を意識した。また文科省の16年度事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」の採択大学もモデルのひとつだ。
新指針の策定を機に、企業の研究資金が国内で活用される仕組みを生み出したい。
(2016/12/21 05:00)
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