[ オピニオン ]
(2016/12/22 05:00)
今世紀後半に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指した「パリ協定」の実現は、再生可能エネルギーだけでは難しい。水力発電の活用を考えてはどうか。
東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故以来、原発への逆風は止まらず、再稼働を一気に進めるのは難しい情勢だ。
といって化石燃料による火力発電を増やせば、今度は気候変動の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が増える。再生可能エネによる発電は固定価格買取制度のもとで増えているとはいえ、総発電量に占める割合はまだ数%、2ケタ台に乗せるには時間がかかりそうだ。
八方ふさがりの電力事情から抜け出す策の一つは、ダムによる水力発電の拡大ではないか。グローバルウォーター・ジャパンの吉村和就代表は元国土交通省河川局長の竹村公太郎氏の著書「水力発電が日本を救う」を引用しながら「ダムの発電量を増やすことで日本の電力の20%以上を賄える」と力説する。
もちろんダムの新設は、水没地域の同意の取り付けや補償も含めて膨大なカネと時間がかかる。このため吉村代表の提言は既存の約3000カ所のダムだけでの話である。
ダムは洪水対策のために制限水位を決め、下流域の水害を防ぐために満水にしない。大ざっぱに言えば半分程度が空いているという。ただ、これは60年近く前の運用規則に基づく。
現在の天気予報なら台風の進路をほぼ正確に予測可能。これに基づいて数日前から放流すれば洪水に備えられる。
加えて吉村代表は「ダムのかさ上げなども加えれば、水力の発電量は2200億キロワット時となり、国内需要の20%超を賄える」と予測する。ダムの水位を上げれば、水車や発電機の増設だけで発電量を増やせる。そのうえ燃料費はタダで、放射性廃棄物もCO2の排出もない。
昭和30年代まで、日本の電力は『水主火従』だった。火力を“従”にできないまでも、水力が発電の“主”の一角に復活すれば燃料輸入も減り、温暖化対策にも有効だ。ぜひ実現の道を探ってほしい。
(2016/12/22 05:00)