[ オピニオン ]
(2016/12/28 05:00)
わが国造船業が久々に年間受注量で世界2位に浮上する見通しだ。中国、韓国に抜かれ、長らく3位に甘んじてきただけに、これを造船ニッポン再興の足がかりとしたい。
2015年は僅差で2位の韓国を抜けなかった。日本造船工業会がまとめた16年1―9月の新造船受注量は日本が293万総トン、韓国が250万総トン、中国が659万総トン。前年同期比でみれば8割減という記録的な低水準の中での競争だが、韓国に対し優位を維持している。
韓国では最大手の船会社である韓進海運が経営破綻するなど、海事産業が苦境にある。中堅造船のSTX造船は銀行管理下に入った。現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業の“造船ビッグスリー”も深刻な業績悪化に陥り、政府に支援を仰いでいる。
これに対し、わが国は先ごろパリで開いた経済協力開発機構の造船部会で、韓国政府の支援が世界の造船市場全体に悪影響を及ぼしている可能性を指摘した。建造能力の過剰は明らかであり、痛みを伴う改革なしに市場原理を無視した支援は認められない。
ライバルが手詰まりになっている今こそ、日本勢としては未来志向を強めたい。幸いにも手持ち工事は2年半から3年分を確保している。足元の受注低迷が業績に響いてくるまでには、時間的余裕がある。
追い風も吹く。20年の硫黄酸化物(SOX)や二酸化炭素(CO2)排出規制を見据え「18年頃から(新造船の)需要があると期待する」(造工会の村山滋会長)。液化天然ガスエンジンなど新技術を開発し、低コスト化を実現すれば韓国や中国と差別化できるはずだ。環境技術などの開発を軸に、造船の世界首位奪還の道を探りたい。
一企業だけの努力で足りなければ積極的に合従連衡にも踏み切るべきだ。海運業界では日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社が主力の定期コンテナ船事業の統合を決め、世界を相手にする体制を整えた。この覚悟を見習い、中長期の成長戦略を見いだしてもらいたい。
(2016/12/28 05:00)
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