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[ 中小・ベンチャー ]
(2017/1/1 05:00)
東京・多摩地域の中小企業が、IoT(モノのインターネット)機器の開発に相次ぎ乗り出している。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に加え、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になる「2025年問題」などの外部要因から、生産性向上のための設備投資が今後拡大するとの判断が各社にある。成長の矛先をIoT市場に向け、最先端分野に挑む。
(西東京・尾内淳憲)
労働人口減、自動化装置に商機
自社の既存事業の延長線と捉えてIoT市場にチャレンジしているのが、京西テクノス(東京都多摩市、臼井努社長)と、システム・インスツルメンツ(同八王子市、浜田和幸社長)だ。
京西テクノスは電子機器などを遠隔監視する装置を開発し、リモート監視サービス「Wi―VIS」を始めた。監視信号の発信器と受信機が1キロメートル離れても遠隔監視が可能。監視用途は電圧や電流、熱など約21項目から選択できる。
同サービスは産学官のロボット普及推進組織「ロボット革命イニシアティブ協議会」から「スマートものづくり応援ツール」のイチオシツールに選定された。
同社は医療や計測、情報通信機器などの電子機器の受託修理サービスが主力。構築された社内インフラを応用することで、スムーズにIoT市場に参入できた。臼井社長は「IoTは労働人口減少に対処する有効なツールになる。業務の効率化や機器のトラブルを未然に防げるといった導入効果が積み上がっていけば、IoT市場は拡大していく」と指摘する。
液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)用窒素ガス発生装置で国内トップシェアを握るシステム・インスツルメンツは、窒素ガス発生装置に圧縮空気を送るコンプレッサーの異常を自動検知するIoT機器「N2安全ロガー」を開発し、1月上旬にも販売を始める。
LC/MSなどの故障原因となる水蒸気の流入を監視し、異常があれば自動で圧縮空気の流路を遮断する。コンプレッサーの累積稼働時間や水分検知履歴といった情報を約1カ月分記録するため、故障の予兆を把握できる。
浜田社長は「LC/MSは高額。故障を未然に防ぐ自動装置の需要は大きい」と自信をみせる。
生産性向上、自社システム外販
武州工業(同青梅市、林英夫社長)は自社の生産性向上のために開発したIoTシステムの外販に乗り出す。3月に発売予定の中小製造業向け統合情報管理システム「BIMMS on AWS」(仮称)は受発注や納期管理などに加えて、米アップルの携帯型デジタル音楽機器「iPod」や自社製の多チャンネル情報処理装置を使って工作機械の稼働データを計測する機能もある。
中小企業へのIoT普及を図るため、価格はデータ量で課金する従量制にし、月額1000円から利用できるようにする方針だ。林社長は「労働人口の減少は中小企業にとって大きな問題。IoTで省力化できるところはすべきだ」と話す。
もっとも、IoT機器を利用する企業の母数が増えなければ、機器開発は進展しない。IoTの基盤整備に詳しい日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下哲也常務理事は、IoTのメリットについて「これまで取得できなかった情報にアクセス可能になり、新製品やサービスの開発に生かすことができる。生産性向上だけでなく、付加価値を高めるツールに有用。企業の規模に関わりなく利点はある」と話す。
ただ、坂下常務理事は中小企業がIoTを導入する際に「自社の業務効率化レベルを知ることが必要。業務のIT化を進めずに、IoTに飛びついても効果は出ない」と指摘する。使う側がこのような利点と留意点を認識すれば、IoT機器の利用は進むはずだ。
(2017/1/1 05:00)