[ オピニオン ]
(2016/12/29 05:00)
経済政策では難局を打開できない安倍晋三首相だが、外交に関しては存分に力を発揮したといえるだろう。
日本時間の28日早朝、75年前に太平洋戦争が始まったハワイの真珠湾を訪問した首相は、米国のオバマ大統領とともに「和解の力」を世界に訴えた。首相が改めて「不戦の誓いを守り抜く」決意を表明し、大統領が「平和が勝ち取るものは戦争より大きい」と強調したことも印象的だった。
首相が15分間を超すスピーチに込めた思いは、わが国産業界の認識と一致する。敗戦国である日本に米国が示した寛容と、その後の両国関係を通じて強固な同盟国となった戦後史は、日本の平和と繁栄の基盤となるものだ。
両国の立場の違いが解消したわけではなく、首相は謝罪を口にはしなかった。しかし、それを乗り越えて両国首脳が現状を肯定し、結束を再確認したことに意味がある。戦後70年余の友情の積み重ねが、未来志向を可能にした。真珠湾の負の歴史を打ち消すことはできないが、日米の和解の象徴としての意味を付け加えるという首相の願いは米国民に伝わったろう。
首相は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長として、西側先進国の結束を確認した。また先のロシアのプーチン大統領との会談や、昨年末の韓国との従軍慰安婦問題の最終合意などでも日本の立場を堅持しつつ一定の成果を得た。外交に満点はないが、かつての短命内閣が続いた日本では安倍政権のまねは不可能だ。
長期安定政権に対する産業界の期待に、首相は実績でこたえた。繰り返し平和を願い、国会の絶対多数を占めても憲法改正を急がない首相に対する産業界の信頼は高まっている。
2016年の国際政治は“まさか”の連続で、先行きの不安要因が少なくない。日米が協調して平和と安定を主導していくことは、両国の繁栄だけでなく世界にとって望ましい。1月に発足する米国のトランプ次期政権とも、この価値観を共有してもらいたい。
(2016/12/29 05:00)
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