[ オピニオン ]
(2017/1/17 05:00)
医療の質や安全性・効率性を高めるためには、現場で使う機器の個体識別が重要だ。古い業界慣行を打破する識別データの利活用を考えてもらいたい。
日本医療機器産業連合会(医機連)や有識者、医療関連団体、行政機関などで構成する「医療製品識別とトレーサビリティ推進協議会」が発足した。個体識別コードによるデータ利活用を検討する。
医療製品の個体識別は「UDI(機器固有識別子)」方式で製品にバーコードを付与する。これを読み取ることで関連業者は製品の発注や入出庫、棚卸し業務を効率化できる。また商品の識別が容易になるため、業務のミス低減や過剰在庫の適正化、不具合発生時の履歴管理にも役立つ。
米国では2013年に、米国の食品医薬品局(FDA)がUDIを法制化した。医療機器の識別情報の利活用は、世界の潮流になりつつある。
日本は早くから、標準コードを用いた医療製品の識別に取り組んできた。厚生労働省は08年に、医療機器の製造販売業者に「GS1―128」と呼ばれるバーコード表示を推奨すると通知。すでに約9割の医療機器でコードを表示している。
ただ医薬品に比べて品種が多種多様な医療機器は取り扱いが煩雑で、せっかくの識別情報の利活用が遅れている。16年4月に開かれた「革新的医薬品・医療機器創出のための官民対話」でUDIの利活用促進が取り上げられ、今回の協議会の発足に至った。
医療機器は多くが専門メーカーや販売業を通し、病院などの医療現場に供給される。経営規模の小さな医療機関が少なくないこともあり、現在でもこれらの受発注業務はファクスや電話での対応が珍しくない。
またメーカーや販社が医療機関の在庫管理業務代行や機器の短期貸し出し、手術・検査立ち会いをすることも多い。こうした「適正使用支援」は日本特有の業界慣行として流通構造を複雑化している。データ利活用を機に改めるべきを改め、医療の質の向上をはかってほしい。
(2017/1/17 05:00)