[ オピニオン ]
(2017/1/26 05:00)
新技術の開発と宇宙関連企業の広がりを、わが国の宇宙のビジネス拡大につなげたい。
日本の宇宙開発は新たな段階に入りつつある。2016年11月に、民間によるロケット打ち上げや衛星運用を定めた「宇宙活動法」と、衛星画像の取り扱いなどを認めた「衛星リモートセンシング法」が国会で成立。商用化の環境が整った。
従来の宇宙産業は事実上、政府予算を使う宇宙航空研究開発機構(JAXA)から大手のロケット・衛星メーカーなどへの発注に限られていた。ようやく欧米のように、宇宙を事業基盤とするベンチャー企業が登場し始めている。
技術面でも着実な進歩がみられる。ロケット打ち上げは昨年12月以降だけでも、大型ロケット「H2B」と小型固体燃料ロケット「イプシロン」が相次いで成功。今年に入り、観測ロケットを改造した「SS―520」4号機は残念ながら失敗したものの、24日には基幹ロケット「H2A」が26回連続となる打ち上げ成功で、信頼性の高さを実証した。
日本の基幹ロケットは、決まった時刻に打ち上げる「オンタイム打ち上げ」などに定評がある。次期基幹ロケット「H3」は三菱重工業が事業主体となり、20年の初号機打ち上げを目指して開発が進行中だ。信頼性の継続に加え、コスト競争力の獲得が急がれる。
他方、16年2月に打ち上げたX線天文衛星「ひとみ」は国際プロジェクトとして成果を期待されたにもかかわらず、初期の姿勢制御の失敗で運用断念に追い込まれた。事故原因はプロジェクトの推進体制がずさんだったためと判明。JAXAは企業との役割分担の明確化や、重要事項の変更記録の文書化の徹底などの改善策を約束した。
17年度は準天頂衛星2―5号機など、従来を上回るペースの衛星打ち上げを計画している。「ひとみ」代替機の開発にも初年度23億円の予算を計上した。同じ失敗を繰り返さないだけでなく、こうした打ち上げ機会の増加を技術力向上とビジネス創出の両面に生かしたい。
(2017/1/26 05:00)