[ 機械 ]
(2017/1/30 05:00)
【大型サーボプログレッシブプレス/世界最大級 水冷で高生産性】
自動車の環境規制の厳格化と安全要求の高まりに、使われる鋼板は軽く、硬くなっている。超高張力鋼板(ハイテン)といった種類のこうした材料を加工するのは難しく、よりパワーのあるプレス機械を高度に制御し、対応している。
金型の上型の重さが22・5トン、金型を取りつける主要構造部品のスライドが100トン、プレスできる最大の力は2700トン。アイダエンジニアリングが米国の自動車会社向けに開発したプレス機械のスペックだ。一つの金型で複数工程の成形を行う順送加工のサーボプレスとして、世界最大級となる。しかも、この巨体を従来機より速く動かし、生産性を2倍に引き上げた。
この自動車会社からの初受注。成功すれば同社と次の取引へとつながりやすくなる重要な案件だ。同時に難易度は高く、実現は容易ではなかった。
一番の壁だったのが、ストロークをつかさどるモーターだ。実績を重ねてきた空冷式モーターでは「求める定格出力を出せない」(鈴木利雄開発本部課長)ため、研究段階だった水冷式モーターを初めて採用した。
ここまでの大きな構造物を高速で動かすにはイナーシャ(慣性)対策が必須だ。サーボプレス機は精度よく、生産性高く成形するため、ストロークを細かく制御できる。さらに生産性を追求するモードにすると「イナーシャが大きくなり、モーターへの負荷が高まる」(半田真也技術本部課長)。そこでモーターの軽量化に取り組んだ。構成部品の設計を見直し、イナーシャを空冷式に比べ10%抑えることに成功。出力を1・5倍に高め、モーターの課題を解消した。
今回のプレス機械は、モーターの状態など広範なデータを収集するシステムを搭載している。システム、制御開発での苦労も絶えなかった。ただ、データ活用は製造業の大きな流れだ。水冷式モーターも「間違いなく標準になる」(鈴木課長)技術だ。今年、同社は創業100周年を迎えた。苦労の中で、次の100年向けた貴重な手がかりをつかんだことだろう。
(六笠友和)
【製品プロフィル】
米自動車大手の要請で開発した、世界最大級の順送加工のためのサーボプレス機械。加圧能力は2700トン。SPM(1分当たりのストローク数)は通常50、振り子と呼ばれる高生産性モードで60とした。自社開発のサーボモーターを搭載しており、水冷式は同社として初。冷却効果は空冷式より高く、1.5倍の出力が得られる。
(2017/1/30 05:00)