[ オピニオン ]
(2017/2/9 05:00)
食品大手の国内工場投資が活発だ。雇用増加などを通じ、地方創生に大きく貢献していることを見逃すべきではない。
各社が新工場や新ラインを建設する理由の一つは「市場の成長」だ。国内市場は高齢化や少子化・人口減少で成長はもはや難しいと考えられがち。だが細かく見ると、少人数世帯向けの簡便調理食品や健康機能食品は着実に伸びている。
今や少人数世帯は若者に限らない。結婚しなかった中高年や子どものいない夫婦、年金暮らしの高齢者夫婦などの世帯も増えている。こうした消費者が選ぶのは、調理が簡単で少ない量で購入できると同時に、健康にも気を配った商品。これらの市場は年2ケタ増の勢いで伸びが続いている。
別の工場投資の理由は、新たな生産技術の登場や新商品開発だ。昨年10月に一部稼働を始めたキユーピーの神戸工場は24時間稼働体制を目指し、ロボットやIoT(モノのインターネット)を積極的に導入した。このノウハウを国内他工場や海外工場へも広げる計画という。
味にうるさい日本人消費者向けに開発した商品が、海外に出しても通用するという認識も広がってきた。日本酒のように毎年、輸出量を増やしている商品もある。飲料の国内最大手、日本コカ・コーラグループは缶コーヒー「ジョージア」やスポーツ飲料「アクエリアス」、「爽健美茶」などを自社開発してきたが、海外のグループ企業でも生産を始めた。
食品大手による海外展開や海外企業買収も近年、増えてきた。とはいえ売り上げの圧倒的主力は国内市場だ。インバウンドなど外国人需要に頼る政策は人気離散や変動リスクを常にはらむ。食品企業による内需掘り起こしには、これが少ない。
各社の新規投資は「日本市場でも努力や工夫次第で十分、やって行ける」ことの有力なメッセージになる。また市民イベントへの出展や工場見学などで人気を集めるのは食品企業が多い。地域住民と工場で一体感を生み、しっかりと地方創生に寄与している。
(2017/2/9 05:00)