[ オピニオン ]
(2017/2/14 05:00)
トヨタ自動車グループの祖、豊田佐吉翁の生誕から14日で150年。これに先がけて故郷の静岡県湖西市で記念式典が開かれた。トヨタからは豊田章一郎名誉会長らが出席。
式典は佐吉の成功物語ではなく「豊田式人力織機」発明までのエピソードに注目。その原動力は「母をもっと楽にしてあげたい」という親孝行の心と「海外に負けない機械を作って日本を豊かにしたい」という報国の精神だった。
来賓は同郷で、やはり織機から自動車メーカーになったスズキの鈴木修会長。両社の提携直後とあって注目されたが、平素の多弁にもかかわらず祝辞は「何はともあれ、おめでとうございます」の一言だけ。主役の豊田家に対する配慮をみせた。
豊田名誉会長は「佐吉の遺訓『豊田綱領』は難局に直面した時の判断、決断、実行のよりどころ。グループに脈々と受け継がれている」と偉大な祖父を偲(しの)んだ。ひ孫にあたる豊田章男社長が高齢の豊田名誉会長のマイクの高さを調整し、降壇時にそっと体を支えた。
式典の出席者約2000人の半数以上は地元の中学生だった。世界的企業の経営者らが壇上でみせた一流の心配りはきっと、佐吉の精神とともに、未来を担う若者たちに伝わったろう。
(2017/2/14 05:00)