[ オピニオン ]
(2017/2/17 05:00)
がんで闘病中のタレントの小林麻央さんのニュースを見るたび、いたたまれない思いにかられる。2人の幼い子の行く末を見届けられないかもしれないという恐怖は、抗がん治療の苦痛に劣らず患者の心をさいなむ。
がん相談施設・マギーズ東京(東京都江東区)のセンター長を務める秋山正子さんの話をお聞きする機会があった。小柄で温和な雰囲気からは想像できないほど強い意志を感じる人だ。
英国の「マギーズセンター」に習った施設には、大きなキッチンテーブルや自然を感じる庭がある。患者はお茶や本でくつろぎ、看護師や心理士を相手に話して一緒に考える。気軽に立ち寄れる“第2のわが家”を目指す。
「患者は(悩みを)ゆっくり話す機会が少ない。ストレスでいっぱいで、相談できる相手を求めている」。がん診断後にうつになったり、離職したりするケースも少なくない。副作用などの身体的苦痛は緩和されつつあるが、心理的苦痛の解消は道半ば。
今や2人に1人ががんを発症し、3人に1人が亡くなる時代。がんとの共生は社会的テーマだ。秋山さんは「がんで見失いそうになる自分を取り戻す居場所が必要」と訴える。病と闘う勇気を支えてくれる場所は貴重な存在だ。
(2017/2/17 05:00)