[ 政治・経済 ]
(2017/3/8 05:00)
米国と中国の貿易摩擦は起きるのか―。保護主義を唱える米トランプ政権の誕生以降、この疑問が常につきまとう。時に不正確な事実認識での発言も辞さないトランプ流の視点で見れば、さまざまな報復措置を繰り出す本格的な摩擦や紛争になる可能性は否定できないことになる。しかし中国専門家の間では、深刻な摩擦は回避できるとの見方が多い。GDP(国内総生産)世界1位と2位の両国の貿易関係が悪化すれば、世界経済にも大きな影響を与えかねない。(大城麻木乃)
【第1位の相手国】
まず、トランプ大統領は米国の貿易赤字7000億ドル超(約80兆円)のうち、中国が半数近くを占めることに不満を持つ。しかし、これは貿易赤字のみに着目した見方だ。輸出入を合わせた「貿易総額」で見れば、米中ともに互いが第1位の貿易相手国。経済産業研究所(RIETI)のリポートの中で中国専門家の関志雄氏は、この点に着目し「貿易戦争が起これば、双方とも大きい打撃を受ける」と指摘する。相互に依存していることは「摩擦に一定の歯止めをかける」と見る。
【旅行者200万人】
またトランプ氏の見方の中で偏っている点は、モノの貿易だけに着目し、サービス貿易を度外視している点だ。今や米国を訪れる中国人旅行者は200万人を超え、米国のサービス輸出の約3割を占める旅行部門は中国が一定の役割を担う。目下、中国と関係が悪化している韓国と台湾では中国人旅行者が急減し、旅行業界が悲鳴をあげる事態が起きている。中国政府にとって、こうした対抗措置はお手の物。米国も同じ憂き目に遭う可能性もある。
富士通総研の柯隆主席研究員は、仮に米国が中国製品に45%という高関税をかけた場合、「まず中国政府は米ボーイングからの航空機の輸入を停止するだろう」と予想する。中国の習近平国家主席は2015年に訪米した際、ボーイング機の300機購入を宣言した。当時は米国との緊密な関係を築く手段としてボーイング機が使われたが、逆に対抗措置に利用される恐れもある。
【豊富な代替先】
さらに柯主席研究員は「米国からの大豆やトウモロコシの輸入を取りやめ、ブラジルや豪州産に切り替える可能性もある」と見る。ボーイング機にしても、輸入をやめれば、欧エアバスが輸出を増やすかもしれない。
トランプ大統領に決定的に欠けている視点は、中国にとっては米国以外の代替先があるという点。米中間に深刻な貿易摩擦が起きれば、豪州やカナダなどを利することになる。
(2017/3/8 05:00)
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