[ オピニオン ]
(2017/3/14 05:00)
1971年以来、46年ぶりとなるサウジアラビア国王の来日を、両国の経済関係の緊密化に結びつけたい。
12日夜に専用機で到着したサルマン国王は13日、安倍晋三首相との会談のほか世耕弘茂経済産業相の表敬を受けるなどサウジの“脱・石油”に向けた経済外交に着手。両国は「日・サウジ・ビジョン2030」を打ち出し、協力覚書を交わした。
同国王は14日には産業界首脳らとの会合に臨み、トヨタ自動車やJXグループなどとの複数の官民プロジェクトに合意する予定。15日の離日まで多くの行事が組まれている。
政治基盤が安定し、国の規模も大きいサウジは“中東の盟主”とされ、同地域の平和と安定の要だ。ただ経済環境は楽観できない。大産油国ゆえに財政収入の大部分を石油関連製品に依存し、昨今の原油価格の下落に打撃を受けている。米国のシェールオイル・ガスとの競争により、今後も原油は上値が重い状況が続きそうだ。
脱・石油は、サウジ経済にとっての死活問題だ。サウジが企業誘致や技術協力を一番切望しているのは、石油と対極に位置するハイテク産業とされる。
米ドルや欧州のユーロの2大通貨以外で、世界的に信用されている日本円を持ち、原油相場に左右されにくい日本のハイテク産業は、サウジにとって魅力的な投資先だ。
あるいは経営再建中の東芝が分社・売却予定の半導体メモリー新会社の買収に関心を示すかもしれない。くしくもサウジは、孫正義社長率いるソフトバンクグループなどと10兆円規模の投資ファンドを近く設立する。機を見るに敏な孫社長がこの好機を見逃すかどうか。
石油関連ビジネスでも、両国にはウィン―ウィンの関係が見込める。一部を除いて大型の石油化学プラントがアジア地域に集中する日本の石化業界にとって、開拓余地の大きい欧州や、高成長の見込める中東・アフリカ地域への供給基地としてサウジの潜在的可能性は大きい。日・サウジの経済連携強化の一段の深化を期待する。
(2017/3/14 05:00)
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