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第46回日本産業技術大賞(下)審査委員会特別賞−清水建設・東洋アルミニウム

(2017/3/23 05:00)

超撥水「アート型枠」開発と実用化

  • アート型枠を使ったコンクリートの打設

  • 超撥水機能がある「アート型枠」

「何かに使うことができないか」。コンクリートの価値を向上する「アート型枠」の開発は、ヨーグルトのカップのフタがきっかけだった。清水建設の辻埜真人技術研究所建設基盤技術センター副主任研究員が、フタの裏側にヨーグルトが付着しないことに着目。思い付いたのがコンクリートを作る時に使う型枠での活用だ。コンクリートから型枠をきれいに剥がせれば、施工品質を高められる。

一方、フタを製造している東洋アルミニウム(大阪市中央区)は「ヨーグルト以外に展開したい」(西川浩之先端技術本部コアテクノロジーセンターディビジョナルR&D加工開発センター室長)と他分野への用途拡大を模索していた。フタには、ハスの葉が水をはじく機能を応用して開発した超撥水材料を塗工してあり、ヨーグルトが付着しない。両社の思惑が合致し、型枠の共同開発を始めた。

だが互いにモノづくりへの考え方が違い戸惑った。清水建設は耐久性や複数回の使用を重視した。一方、東洋アルミは大量生産やクリーン対応は得意だが、建設現場は未知の世界だ。辻埜氏は「何度も現場に来てもらい、作業を見ていただいた」、西川氏は「思っていたより過酷な環境だった」と振り返る。

開発したアート型枠は、耐久性を持たせるため表面を2度塗りし、2層構造とした。型枠表面に形成される凹凸が、水をはじく超撥水機能と光を乱反射する機能を発揮する。この結果、アート型枠で成型したコンクリートは、品質低下となる表面の気泡跡を低減し、色むらの抑制効果をもたらした。当初の目的だった型枠の剥がれやすさも実現した。

アート型枠の採用実績は現在まで4件。コンクリートの美観の良さが売りだ。辻埜氏は「異業種連携で取り組めたのが一番の成果。将来は美観を持続させる技術を開発したい」と先を見据える。

(編集委員・村山茂樹)

【技術プロフィル】

コンクリートの美観や施工性を高めるコンクリ用の型枠。水をはじくハスの葉の表面を模倣し、型枠表面に凹凸形状をつくり超撥水機能を付加した。コンクリから型枠がきれいにはがれ、コンクリ表面の気泡跡の低減や色むらの解消効果もある。生物の構造や機能などを模倣したバイオミメティクスの一つ。

(2017/3/23 05:00)

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