[ オピニオン ]
(2017/4/4 05:00)
個人消費など家計部門の回復力が依然として弱い。家計にくすぶる将来不安を払拭(ふっしょく)することで内需拡大に結びつけたい。
日銀が3日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、日本経済が緩やかな回復基調にあることをあらためて示した。代表的指標である大企業・製造業の現状の業況判断指数(DI)はプラス12(前回2016年12月短観はプラス10)と2四半期連続で改善。世界経済の緩やかな回復に伴う輸出増や円安基調が業況を押し上げた形だ。
3カ月後の先行きの同DIがプラス11とわずかに悪化したのは、トランプ米政権による政策実現性や欧州の政治リスクなど、海外経済に流動的な要素が残ることが背景にある。
とはいえ、これらの懸念が杞憂(きゆう)に終われば、日本は堅調な世界経済を追い風に輸出や生産が増え、設備投資も持ち直しの動きを強めよう。大型経済対策の本格執行による公共投資も加わり、17年度も緩やかな景気回復が続くと期待される。
ただ気がかりなのは、景気のけん引役が輸出や生産などの企業部門にとどまることだ。今年の春の労使交渉(春闘)での賃上げ率は前年実績を下回る見通し。また原油の需給ギャップ改善によるエネルギー価格の上昇も予想され、実質賃金が減少に転じる危険がある。
回復力の鈍い内需を喚起するには、社会保障をめぐる将来不安を解消するだけでは不十分だ。先進国の中でも低いとされる日本の労働生産性を引き上げることで、今回の日銀短観でも示された企業の人手不足と消費停滞を同時に解消する施策を推進したい。
安倍晋三政権は人材への投資を成長戦略の柱と位置づけ、働き方改革や教育改革による労働人口増と所得増を目指す考え。このため年央に新成長政略をまとめ、18年度の予算編成に反映させる方針だ。
先行き不透明な外需依存の成長には危うさが残る。政府は新成長戦略による働き方改革や教育改革の実効性を高め、内需拡大への確かな道筋を描いてもらいたい。
(2017/4/4 05:00)
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