[ オピニオン ]
(2017/4/11 05:00)
米新政権のパフォーマンスに惑わされることなく、産業界は地球温暖化対策技術の開発・普及を一段と進めるべきである。
温暖化対策に積極的だったオバマ前政権の政策を全面否定する大統領令に、トランプ大統領が署名した。発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに05年比32%減らす「クリーンパワープラン」を撤回する。同プランは排出削減の柱で、燃焼でCO2を多く出す石炭火力発電所は対策費がかさむため、廃炉を迫られていた。
18年度予算案で気候変動対策費の大幅削減も打ち出した。環境保護局の予算を31%減の57億ドルに縮小し、人員も2割減らす。省エネルギー技術の開発予算の削減も検討する。
国際社会が途上国支援のために設立した「緑の気候基金」への30億ドルの拠出も停止する意向だ。排出量世界2位の米国が後ろ向きになると、世界全体の取り組みが鈍る恐れがある。
とはいえ、政策転換を米産業界が支持するかは疑問だ。米国の再生可能エネルギー関係の雇用は55万人以上で、石炭産業の3倍となっている。1月にはヒューレット・パッカード、ジョンソン・エンド・ジョンソン、デュポンなど約600社・団体が、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」から離脱しないよう求める要望書を出した。
アップル、ゼネラル・モーターズなどは、事業に関わる電気の全てを再生エネで賄うと宣言。電気自動車(EV)のテスラも成長するなど、政府より産業界が低炭素化を先導する。
なぜなら、米産業界が温暖化対策をビジネスチャンスと捉えているためだ。国際エネルギー機関は、パリ協定の目標達成にはエネルギー関連で75兆ドル(8250兆円)の投資が必要と報告している。40年までにEVの保有が7億1500万台になるとも予想する。
米産業界はこの巨大市場を狙っているのだ。例え米新政権が消極的でも、日本企業はCO2排出ゼロの脱炭素技術や省エネ技術など、温暖化対策技術の開発の手を緩めることなく、一層力を入れてほしい。
(2017/4/11 05:00)
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