[ オピニオン ]
(2017/4/13 05:00)
働き方改革の最重要課題である長時間労働の是正に向けた法改正議論が始まった。政府には労使合意に沿いつつ、中小企業に配慮した法案化を求めたい。
政府が3月末にまとめた「働き方改革実行計画」は、特別な理由がある場合に労使が協定(36協定)を結んでも、上回ることができない残業時間を年720時間、月平均60時間以内と定めた。今秋の臨時国会に関連法の改正案を提出する。
ただ「実行計画」は産業界の声が十分、反映されたとは言い難い。運輸と建設業については、残業時間の上限規制が法施行後5年間は猶予されることとなったものの、経団連と連合だけで網羅できない業種への影響を不安視する向きが多い。
長時間労働の改善について経営側は、企業規模を問わず必要性を認識している。日本商工会議所の調査では、36協定の特別条項の見直しに5割以上の中小企業が賛成している。
ところが「実行計画」では、こうした中小企業への配慮は踏み込み不足だ。今回の上限規制は違反が発覚した場合、会社や担当者が書類送検されることもあり、大きな経営リスクとなる。それだけに取引条件の適正化や長時間労働の背景にある商慣習の見直しと一体で進めることが不可欠だ。大手企業が働き方改革を急ぐあまり、無理な発注や急な仕様変更といったしわ寄せが中小企業に及ぶことがあってはならない。
具体的な制度設計を議論する労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)では、中小企業の声にも耳を傾け業種特性や現場実態を踏まえた実効性ある法案となるよう細部を詰めてほしい。
働き方改革は安倍晋三首相肝いりの政策だ。繁忙期に容認する残業時間を巡り平行線が続いてきた労使協議が、首相裁定で最終決着した経緯がある。
長年の雇用慣行を打破する企業独自の取り組みが成果を上げるには時間を要する。「労働基準法70年における大改革」(安倍首相)を絵に描いた餅で終わらせることがないよう、政権には労使の自主的な取り組みを尊重する姿勢を期待する。
(2017/4/13 05:00)