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[ 建設・住宅・生活 ]
(2017/5/23 05:00)
清水建設は戦後の建築物として、初めて国の重要文化財(重文)に指定された「世界平和記念聖堂」(広島市中区)の保存修理工事を手がけている。耐震補強、屋根や外壁の補修、ステンドグラスの修理などを約2年かけて行う。文化財の補修は、可能な限り原状回復する必要があり、現代の工法や材料をそのまま適用できない場合がある。建築的な構造や外観、材料など、建物の持つ文化的価値を損なわないよう、細心の注意を払っている。(編集委員・村山茂樹)
世界平和記念聖堂は戦後、原子爆弾による惨状を目の当たりにした、ドイツ出身のフーゴ・ラサール神父が建設を発案。原爆犠牲者の追悼と慰霊、世界平和と友情のシンボルとすることを決意した。建築家の村野藤吾氏が設計し、清水建設が施工して1954年に完成。2006年に国の重文に指定された。
最初の補修工事が行われたのは、建築から約30年後の83年。以後89年、01年に大規模な補修工事が実施された。いずれも清水建設が担当した。今回は重文指定後、初めての補修工事となる。工期は16年11月―18年12月末だ。
同聖堂の補修工事を担当する、清水建設広島支店建築部の野津田義幸工事長は「戦後建てられた現代建築の鉄筋コンクリート造で、重文の大規模な修理・修復工事はいまだにない」と、新たな挑戦であることを強調する。
今回は補修だけではなく耐震補強も行う。高さ45メートルの塔は鉄骨やブレースを設置する。建物の基礎部分では、すでに地盤改良を行って25メートルの杭を打ち込んだ。本堂についても、屋根裏の骨組みのトラスや支持材の補強、コンクリートの耐震壁の設置などを行う。
補修工事は、図面に記載がない思わぬことにも遭遇する。耐震壁を設置するため壁を取り外したところ、下地にたくさんのれんがが出てきた。「非常に貴重なもの」(野津田工事長)という。耐震壁の設置と同時に原状復帰するため、れんがを大切にとってある。手間がかかり工期が伸びるが、「文化財を守るには必要」(同)と話す。
文化財の補修工事は、容易に建物の部材に手を加えられない。例えば、普通の工事ならばビス留めする場合でも、部材に傷が付くのを防ぐためビス留めしない。ただ、建物に耐久性を持たせるには、建設当時の手法で対応できない場合もある。
建物の保存と品質向上を両立させるのは難題だ。野津田工事長は「文化的価値を守りながら、いろいろな技術の手法を見いだしていきたい」と、難題に挑む構えだ。
(2017/5/23 05:00)
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