[ ICT ]
(2017/5/27 09:00)
米アップルが人工知能(AI)を組み込んだ半導体チップを開発中だと、ブルームバーグが関係者の話として26日報じた。アップル社内で「アップル・ニューラル・エンジン」と呼ばれているこのチップは、顔認識や音声認識といった処理を専門に実行し、開発中のiPhone(アイフォーン)のプロトタイプで試験を行っているという。ただ、今年の秋に発表される次のiPhoneに搭載されるかは不明。アップルはコメントを拒否した。
さらに、iPhone、iPadといったモバイル機器以外の用途として、自動車向けの拡張現実(AR)も想定されるとしている。アップルは自動運転車を含め、車関連の技術開発にも取り組んでいるとされる。ARを使って、フロントガラスのディスプレーに実際の風景とさまざまな情報を盛り込んだグラフィックスとを融合させながら表示するのに、AIチップを役立てる可能性もあるという。
iPhoneやiPadといった現在のアップル製品では、複雑なAI関連の処理を自社開発の「Aシリーズ」のマイクロプロセッサーやグラフィックスチップで行なっている。それに対し、専用チップを組み込むことで処理の高速化が期待できるほか、機器全体のエネルギー消費が減ってバッテリーを長持ちさせられる利点がある。
6月5日に開幕するアップルの世界開発者会議(WWDC)ではiPhone/iPad向けにユーザーインターフェースなどを改良した新OS「iOS 11」のお披露目が予定されているが、WWDCでアップルのAI関連の技術成果について何らかの発表があるかもしれないという。
アップルは2011年10月、iPhone 4S向けに音声アシスタントの「Siri(シリ)」を発表し、この分野で先行した。だが、その後はアマゾンやグーグルがAI開発で盛り返し、それぞれ「エコー」「グーグルホーム」というスピーカー型音声アシスタントで新市場を切り開いている。新型のグーグルホームは日本でも年内に発売の予定。さらに今回のWWDCでは、アップルもSiriの機能を搭載した音声認識スピーカーを発表すると噂されている。
一方、AIチップをめぐっては、米クアルコムがスマートフォン向けマイクロプロセッサー「スナップドラゴン」の最新型にAI処理を専用に行うモジュールを搭載。グーグルも16年にデータセンター(DC)向けのAIチップ「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」を発表し、グーグル検索や画像認識処理に役立てている。5月上旬開催の「グーグルI/O 2017」で公開した第2世代のTPUは、顧客向けのクラウドビジネスにも応用していくという。GPU専業大手のエヌビディアもDCやAI開発、自動運転車向けなどのAIチップで注目の的となっている。
(2017/5/27 09:00)