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(2017/6/9 05:00)
東京・有明の東京ビッグサイトで開催中の「植物工場・スマートアグリ展」は、植物工場が世の中に浸透しつつも、思うように収益が上げられていない実態を踏まえ、単価や付加価値の高い作物、販売先の工夫などで差別化する展示が目立った。また、「グリーンビルド展」は政府が進める国産材の使用拡大に向け、各社が楽器や家具、床材などを提案した。9日まで。
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≪植物工場・スマートアグリ展2017/高付加価値化・販売に工夫≫
シンフォニアテクノロジーはイチゴの完全人工光型植物工場システムを初めて紹介。「夏でもイチゴが収穫できる」と、担当者は胸を張る。夏場のイチゴは栽培が難しいため、市場で高く売れる。ヒートポンプや制御機器で培った技術を活用した。
北海道苫小牧市では農林水産省が進める次世代施設園芸プロジェクトで、イチゴやパプリカを植物工場を使って栽培している。レタスなどの葉物野菜と比べ、高値で売れるのが強みだ。「涼しい気候のため年中栽培が容易で、日照時間が多い利点も生かせる」。担当者はイチゴなどを作物に選んだ理由をこう説明する。
アルミス(佐賀県鳥栖市)は簡易栽培型の「ベジ・ウォール」を出展。野菜苗を大きく育ててから購入者に供給する方式で、ホテルやレストランのサラダバーなどの需要を見込む。一般の人工光植物工場も出展。顧客の要望に合わせて、多様に対応する。パナソニックは独自の空調技術で、温度差の少ない栽培空間を実現。重量歩留まりが約95%と生産性の高い点をアピールした。
農水省の担当者は「単に植物工場を作ればいい時代は終わった」と指摘する。今後は「販売先の確保や差別化が重要になっている」と話す。一方で、過疎化に悩む市町村では「植物工場は雇用確保の役割も大きい」と話している。
≪グリーンビルド展2017/楽器・家具に国産材≫
杉山木工(山形県中山町)は、5軸数値制御(NC)加工機を使って生産した「iPhone(アイフォーン)」用の木製スピーカーやアルプホルンを出展した。スピーカーは精密加工によって音の“通り道”をつくることで、電源を使わずに音を増幅することを可能にした。
榊工業(山梨県南アルプス市)は、山梨県産の杉材を使った住宅用の小型の多目的室を出展。押し入れに収まるサイズで、書斎などを気軽に設けられる。地震などの際の避難スペースとしての利用も想定しており、強度の裏付けを取った上で秋にも発売する考え。
夢木香(名古屋市天白区)は、木製フレームを三角形に組んだユニークな構造のドーム型テントや、軽量なアルミフレームを使い、木などに結びつけて浮遊させられる球体テント「フロートドーム」を展示した。
【IoTで農業魅力ある産業に−日本総研・三輪氏が講演】
「植物工場・スマートアグリ展2017」では8日、日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史シニアスペシャリスト(写真)が「農業IoT、その先へ〜農業から他業種へ拡がる社会イノベーション」と題し、講演した。三輪氏は農業の担い手が減り、耕作放棄地が増える中でIoTを使い「農業を魅力のある産業に変えられる」と指摘。消費者と農業の現場をIoTでつなげることは、農業者の所得を増やす基盤になり「双方が幸せになる」と説いた。
具体的には気象や土壌のデータを生かしたキャベツの収穫予測システムで、豊作の時はジュースや冷凍食品メーカーとマッチングし「廃棄ロスを減らし、値崩れも防げる」と提案。センサーを使い糖度12度以上のトマトを生食向け、8度未満はイタリア料理店などに卸せば高値で売れ、所得を増やせるとした。スマート農業は効率化だけでなく「作物の高付加価値化が図れることに本当の意義がある」と強調した。
(2017/6/9 05:00)