[ オピニオン ]
(2017/6/9 05:00)
政府がデフレ脱却を目指す中で、価格破壊の旗手であったスーパーなどのチェーンストアは何を目指すべきか。自らのあり方を再考する必要がある。
6月から、はがきが23年ぶりに62円に値上げされた。大手の電気・ガス料金は輸入価格の変動に連動し、5カ月連続で値上げとなった。消費者にとってうれしい話ではない。
さらに理由があいまいなのがビール類の値上げだ。6月の改正酒税法施行に伴い、国税庁は原価を下回るビールの安売りに対する監視を強める。違反した場合には社名を公表し、酒販免許を取り消すこともある。
メーカーからのリベートが大手小売業者の安売りの原資になっている。これを抑制し、中小・零細の酒販店を保護するという。この新たな規制の影響が消費者に及ぶのは確実だ。ある種の“官製値上げ”といえる。
政府はビールと発泡酒、「第3のビール」の税率を段階的に一本化する酒税改革を進めている。一方、近年のビール類の市場は明らかな縮小傾向にある。政府による実質的な価格への介入には、将来も関連税収を減らしたくないという思惑も感じられる。
日本経済の「脱デフレ」は、政府だけでなく、産業界の念願だ。とはいえ、食料品など消費者にとって身近な商品の値上げは、今後も多くの分野であつれきを生むだろう。
イオンの岡田元也社長は「脱デフレは大いなるイリュージョンだ」と指摘した。では各社は、値上げが相次ぐ経済環境を、どうとらえているのか。
本来、スーパーなどチェーンストアの原点は運営コストを削減し、規模拡大でメーカーとの交渉力を強めることにある。その上で、日常必需品を毎日変わらぬ低価格で提供するということが使命だったはずである。
一部消費者の高級志向に適応するのもいいだろう。しかし大方の節約志向が変わらない中で、商品の価値と価格の再点検が必要だ。粗製乱造の「安かろう悪かろう」ではなく、チェーンストアの本分を取り戻した価格戦略を期待したい。
(2017/6/9 05:00)