[ 政治・経済 ]
(2017/6/9 20:00)
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は、英総選挙の結果、与党・保守党の議席が過半数を割り込んだことで、英国とのEU離脱交渉の行方が不透明になったと懸念を強めている。保守党の圧勝を前提に本格的な交渉開始を今月19日と想定し、「万端な準備」(欧州委員会報道官)を整えていたが、英政局が混迷すれば、交渉の進め方の修正を迫られる可能性がある。
EUは5月22日の総務相理事会で、交渉戦略を定めた「交渉指令」を採択し、交渉の法的な準備を終えた。EUの首席交渉官に任命されたバルニエ氏は早期に交渉に着手したい意向を示していたが、選挙を受けツイッターで「交渉は英国の準備が整った時に始めるべきだ」として、開始時期を遅らせる可能性を示唆した。
また、トゥスクEU大統領は「交渉を終わらせるべき時期は明確だが、いつ始められるか分からない」と懸念を表明した。
「ハード・ブレグジット(強硬な離脱)」路線を選択し、EUとの衝突も辞さないメイ英首相に対し、ユンケル欧州委員長は「離脱に成功などあり得ない」と苦言を呈したとされる。それでもEUは、限られた原則2年間の交渉期間で合意をまとめるためには、「保守党が大差で勝利し、メイ首相が政権基盤を固めることが重要」と考えていた。
EUは交渉指令で、600億ユーロ(約7兆4000億円)規模とされる英国の未払い分担金問題などの交渉を優先する強気の姿勢を見せている。ただ、英政局が混迷する状況下で強気を押し通せば、2年での合意が遠のき、交渉決裂を招く恐れも高まる。今回の英総選挙は、EUにも難しい課題を突き付ける結果となった。
(2017/6/9 20:00)