[ 自動車・輸送機 ]

タカタ破綻/部品、低額弁済を懸念−取引継続、資金繰り影響

(2017/6/27 05:00)

  • 臨時説明会が開かれた愛知川製造所、日常同様にトラックが出入りしている

タカタの民事再生法適用申請を受け、サプライヤーへの影響が懸念される。帝国データバンクによると、タカタの下請け企業数は全国で約570社。業績への影響が注視される。

26日、民事再生法を申請したタカタ。申請後も工場の操業を停止しない方針だ。同日、愛知川製造所(滋賀県愛荘町)で急きょ開かれた取引先向け説明会でも、その方針について説明があった。

エアバッグ用ケースなどを手がける愛知県のサプライヤーの幹部は、「事業が停止しないのはひとまず安心だ」と胸をなで下ろす。シートベルト用部品を納める三重県亀山市の会社や、同じく同部品を納める神戸市のメーカーも「これまで通り取引が継続できそうだ」としている。

ただ、静岡県内のサプライヤーは「長期的視点で見ると、事業に何かしら影響が出てこないとも限らない」と注意深く見守る構え。26日の記者会見では、一般債権の全額弁済に関して特段の言及がなかった。東京商工リサーチの担当者は「全額弁済の方針が決まらないと、資金繰りに今後影響が出てくると考えられる。(取引先は)まだ安心はできない」との見方を示した。

タカタは28日から、債権者説明会を全国3カ所で順次開く。28日13時から東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催。追って、30日13時に長浜ロイヤルホテル(滋賀県長浜市)で、7月3日14時にホテルグランデはがくれ(佐賀市)で開く。

企業法務に詳しい、みらい総合法律事務所の山内亘パートナー弁護士は、タカタの下請け企業の債権について「タカタが検討している事業譲渡スキームでは、事業譲渡で得た資金を基に再生計画に従って弁済することになる」とした上で、「基本的にはリコール債権と同列に扱われるため、下請け企業への弁済額は非常に低額になることが予想される」と説明する。

また、今後のポイントは「自動車メーカー各社がどの程度のリコール債権を申請するかではないか。その規模によって、下請け企業が回収できる債権額も変わってくる」と指摘する。さらにタカタ製エアバッグで事故が起こった場合、被害者が新会社(譲受会社)に賠償請求できるかについて、「新会社は別会社のため、事業譲渡の契約内容次第だが、基本的には将来の偶発的債務は引き継がない。被害者が新会社に損害賠償請求をするのは難しいだろう」としている。

【250億円融資枠−三井住友銀】

一方、下請け企業の資金繰りが懸念される中、タカタの主力行である三井住友銀行の幹部は「下請けの支援も考えないといけない。サプライチェーンを守るよう対応していく」と話す。

同行は26日、タカタの申し立てを受け「DIPファイナンス」を提供すると発表。総額250億円を上限とするコミットメントライン(融資枠)を設定する。

DIPファイナンスは、民事再生法など法的整理手続きの申し立てから再生計画が認可される間に行われる融資のことで、手続き期間中の事業継続を安定にして、下請けサプライヤーなど取引先の資金繰りも支えられる。

「タカタと同様に(資金繰りの)課題に直面している」。高田重久会長兼社長は同日の会見で下請けの資金繰りの窮状を話した。同行はタカタの取引先への円滑な支払いを通して、タカタ製品の安定供給を支える考え。法的整理手続きに伴う一時的な混乱回避を狙う。

【生産への影響は軽微−スバル】

SUBARU(スバル)は26日、タカタが民事再生法の適用を申請したのを受け、2018年3月期以降に追加のリコール費用などを計上する必要があり今後費用等について精査すると発表した。

またタカタへの求償権に関する回収可能性に不透感があることから、その影響についても精査していく。またタカタが事業を継続しながら再生手続きを進めるため、スバルの生産に与える影響は軽微とのコメントを出した。

スバルは17年3月期までにタカタ製エアバッグインフレーターの品質問題関連費用で約735億円を計上している。

【取り立て懸念、債権が5700億円−トヨタ】

トヨタ自動車は26日、タカタの民事再生法の申請に伴い、取り立ての不能や遅延のおそれが生じる債権などが5700億円に達すると発表した。トヨタ製の車両ですでにリコール(無料の回収・修理)の作業や届け出を実施したものを対象としている。

これらのリコール費用は引き当て済みのため、業績への影響は軽微という。トヨタは顧客への安全・安心を最優先する対応のため、タカタから今後も安定的に部品供給を受けるように最大限努力するとしている。

【タカタ破綻/トヨタ「情報をしっかり共有」】

トヨタ自動車の伊勢清貴専務役員は26日、都内で開いた新車の日本披露会で、タカタの民事再生法の適用申請について問われ「まずはお客さまに迷惑を掛けないということで対応を急ぐ」と強調した。今後の状況に対しては「なにかあったときにはしっかり公開する」と語った。

さらに「今回の件はトヨタ自動車だけの問題ではなくて、世界のカーメーカーの問題でもあるので、情報をしっかり共有する」とも述べた。タカタのエアバッグが大規模リコール(無料の回収・修理)に発展した教訓として「我々カーエンジニアにとっての一つの大きな“警笛”となったのは事実だと思う」と続けた。

【タカタが説明会/200社参加】

タカタは26日、民事再生法の申請を受けて、取引先を対象とした説明会を、愛知川製造所(滋賀県愛荘町)で開いた。2回に分けて開催し、約200社が参加したとみられる。

説明会では、工場を引き続き操業する旨のほか、取引先に対する支払いをこれまで通り続ける予定であることが説明された。ただ、28日に再生手続き開始が決定される予定。

「支払いが従来と本当に変わらないかは、28日の夕方になるまで分からない」とサプライヤーの幹部は気をもむ。

登壇者の説明によると、従来通りの支払いが続くのは、キー・セーフティー・システムズ(KSS)への事業譲渡が完了する18年第1四半期までという。

(2017/6/27 05:00)

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