[ ICT ]
(2017/6/28 05:00)
LINEは独自の人工知能(AI)を搭載したスピーカーを2017年秋に発売する。話しかけると会話したり、ニュースを読み上げたりする機能を持つ。多様なサービスなどとの連携も推進し、AIの価値を高める考えだ。音声を使った端末とのコミュニケーションが浸透し始める中、米アマゾン・ドット・コムなど米国勢の来襲を前に先手を打ち、音声対話の覇権を狙う。(葭本隆太)
「本日の東京都渋谷区の天気は晴れ、一時くもりです」。都内で開かれたLINEの事業戦略発表会。AI搭載スピーカー「WAVE(ウェーブ)」は「今日の天気は?」という問い掛けに対し、そう返答した。ウェーブを初披露したLINEの舛田淳取締役は「音声で話しかけるだけでいろいろなことができます」と、デモンストレーションの成功に安堵(あんど)の笑みを浮かべた。
ウェーブは、親会社の韓国NAVERと共同で開発したAI「Clova(クローバ)」を搭載した初の端末だ。話しかけるとAIが内容を認識し、音声で会話したりニュースや天気を読み上げたりする。正式発売は今秋だが、機能を絞った先行版を今夏に発売する。
AI搭載スピーカーをめぐっては、米国勢による日本市場への参入が間近に迫っている。米グーグルは「グーグル・ホーム」を年内に発売する予定。アマゾン・ドット・コムの「アマゾン・エコー」も年内の発売が噂(うわさ)されている。LINEはこうした動きに先行する構えだ。舛田取締役は「多様な企業がAIに挑戦する中で、少しでも早く利用してもらいデータを蓄積することは競争力になる」と力を込める。
一方でウェーブはクローバの能力を示すショーケースにすぎない。LINEの出澤剛社長は「(ウェーブは)クローバをオープンプラットフォームにする第1段階」と説明する。多様なメーカーなどとクローバの連携を推進する呼び水と位置付ける。
LINEは対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」を“入り口”に多様なサービスを展開し、利益を拡大する「スマートポータル構想」を成長戦略に掲げる。今後、音声によるコミュニケーションが浸透すれば、それをつかさどるAIが搭載された端末は対話アプリに変わる“入り口”になる。このため多様なメーカーと連携し、クローバを搭載した端末を増やすことで「スマートポータル」の利用者拡大につなげる狙いだ。
また、オープンプラットフォームとしての価値を高める上ではクローバとつながるサービスの拡大も肝要だ。このためLINEは洋服や家電などのブランドの電子商取引(EC)サイトに送客するサービスを始めた。またコネクテッドカー(つながる車)分野における新サービスの検討に向けてトヨタ自動車と合意するなど、企業との連携も着実に進めている。
日米同時上場から間もなく1年。16年12月期の決算発表時は株価が上場以来の最安値を記録するなど、期待値ほどの伸びは見せていない。AIへの挑戦が成長に向けた起爆剤になるか注目される。
(2017/6/28 05:00)
電機・電子部品・情報・通信1のニュース一覧
- LINE、“黒船”襲来前に先手−AI搭載スピーカー、夏に先行版発売(17/06/28)
- 航空電子、金属細線タイプの静電タッチパネル量産−大型化・曲面化実現(17/06/28)
- 「光るペチュニア」誕生−NECソリュなど、蛍光遺伝子組み込む(17/06/28)
- KPMGコンサル、ゴーグル型端末の活用支援 製造現場を効率化(17/06/28)
- ソニー、深層学習用プログラムを無償公開(17/06/28)
- 住友電工、歩行状態を6要素で解析する計測・評価システム(17/06/28)
- 米CATV2社、携帯電話サービス提供へ−スプリントに出資も(17/06/28)
- 米アップルとシスコ、法人向けサイバー防衛強化(17/06/28)