[ オピニオン ]
(2017/7/20 05:00)
森林を再生可能な資源として活用するためには、きちんとした管理が必要だ。
全国的に土地の所有者不明が問題になっている。法務省の調査によれば、大都市の個人所有地で50年間以上、自治体に登記がされていない土地の割合は6・6%。これが中小都市や中山間地域では26・6%だった。相続などで所有者が分からなくなっている懸念が大きい。
用途別でみると宅地より田畑や山林の方が比率が高い。特に山林は32・4%と3分の1に迫る深刻な水準だ。総務省は行政評価として、土地の所有者確認を自治体に要請するよう農林水産省に勧告した。
所有者不明の大きな原因は土地神話の崩壊だろう。登記とは価値ある資産の所有権を明確にするのが目的だ。逆に所有者が価値を認めなければ、登記や土地所有者届がおろそかになる。
山林は宅地や商業地に比べて価値を生み出しにくく、国有林野の巨額赤字からも分かるように所有者にとって「マイナスの資産」になることすらある。現代の“山持ち”は必ずしも資産家や富裕層ではない。
こうした状態が長期にわたって続けば、森林という資源の持つ意味が失われてしまう。日本の国土は森林の比率が大きく、二酸化炭素の吸収に有利とされてきた。間伐材などを燃料とする木質バイオマス発電は再生可能エネルギーとして期待されている。高機能の木造住宅は「自然に優しい」と人気を集める。
しかし、そもそも管理されない森林は再生可能資源として機能しない。植林をしない立木利用は自然界からの収奪であり、国土保全の面でも、また地球環境問題でもマイナスだ。
総務省は行政評価の中で、木造建築物を活用して木材の魅力を高めることや、燃料チップの適正な確保の周知を関係省庁に勧告した。森林資源の利用環境を整備することは土地所有者のメリットにつながる。妥当な方向だが、実現には相当な時間がかかるだろう。まずは所有権を明確にし、必要なら国や自治体が前に出て管理を徹底すべきではないか。知恵を集めたい。
(2017/7/20 05:00)