[ 金融・商況 ]
(2017/8/4 05:00)
テックビューロ(大阪市西区)は3日、「ICO」と呼ばれる仮想通貨による資金調達のサービスを始めると発表した。10月にも第1号案件を開始する。ICOは既存のIPO(新規株式公開)より低コストで資金調達ができる利点があり、既に一部企業で活用に向けた動きがある。ただ、本格展開には投資家保護の法的整備を含めた課題への対応も焦点となりそうだ。(杉浦武士)
ICOとは「イニシャル・コイン・オファリング」の略。投資家から仮想通貨の払い込みを受け、企業は対価として自社で展開するサービスなどに利用できる独自の仮想通貨「トークン」を引き渡す。企業は受け取った仮想通貨を専用交換所で売却することで事業資金に充てる仕組みだ。
IPOなどと異なり証券会社が介在せず、企業が世界中の投資家を相手に直接売り出しができる。このため調達コストが低くなり「上場企業だけでなく、起業家にとっても利便性が高い」(業界関係者)利点がある。
今回、テックビューロが始めるのはICOによる資金調達を一貫して支援するサービス「COMSA」。IPOでいう目論見書に該当するホワイトペーパーの作成から、投資家へのアピール、ブロックチェーン技術の導入、トークンの発行を一貫して支援する。
既に、ICOとしては年内までにテックビューロを含む3社の案件が計画されている。この内、東証2部のプレミアムウォーターホールディングスは子会社を通じて検討中。実現すれば、上場企業として初めての取り組みとなる。同社は「新しい事業価値創造に向けた一つの挑戦として検討したい」と話す。
とはいえ、ICO普及には課題もある。投資家自身にある程度の目利きが要求されることや、投資家保護のためのルールが未整備で不正な資金集めに活用されるリスクがある。そもそも仮想通貨自体が「投機対象として価格変動が激しくなりやすい」(証券アナリスト)との意見もある。
このため、テックビューロは専門の協議会を立ち上げ、国内ICO普及の活動を始めることも明らかにした。
米国を含む世界ではICOによる資金調達額がベンチャーキャピタルによる調達額を上回るなど、ICOが活発化している。テックビューロの今回のサービスが日本でもICOが根付くきっかけになるのか。資本市場の関係者もその動向を注視している。
(2017/8/4 05:00)
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