[ 中小・ベンチャー ]

不撓不屈/ナミテイ(2)第3太平洋横断ケーブル

(2017/8/9 05:00)

光ファイバーの保護管作成

  • 光ファイバーと保護管。保護管の外側をピアノ線、鋼パイプ、絶縁ポリエチレンなどが守る

【謎の精密異形線】

1984年(昭59)、ナミテイ(大阪府東大阪市)は用途が明らかにされないまま謎の精密異形線の製作を請け負った。第3太平洋横断ケーブル「TPC―3」プロジェクトの入り口に立っていたのだが、社長の村尾雅嗣(まさつぐ)(現会長)をはじめ、ナミテイの誰一人それを知らない。ただ黙々と、誤差の許容範囲(公差)が「やたらに厳しい仕事」(雅嗣)と向き合っていた。

この精密異形線は、パイプを三ツ割にした扇形断面。全長1000メートル、公差はプラスマイナス5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。金型の修正を延々と繰り返していた。

TPC―3は太平洋を横断する3番目のケーブル。素材が同軸ケーブルから大容量の光ファイバーケーブルに変わり、技術が大きく違う。海底ケーブルはこれまで、米AT&Tが主導。だが、初めて日米双方がケーブルを太平洋でドッキングさせるという、対等な立場のプロジェクトという点も画期的だった。

【厳しい寸法精度】

わずかな衝撃で折れてしまう光ファイバーを、最深部は800気圧に及ぶ水圧から守らなければならない。強度と精度を持つ保護管が必要不可欠だった。

「技術には自信があった」雅嗣だったが、ケタ外れの寸法精度に苦労した。徹夜を繰り返しようやく納品。技術が認められたからか、商社は用途を明かした。KDD(現KDDI)や電線大手各社がオールジャパンで取り組むプロジェクト。想定外の大きな話に「なんや。それならウチは試作だけでお役御免になるな」と同プロを遠巻きに眺めていた。

しかし、その後に3000メートル、6000メートル、10キロメートルと試作は次々に発注された。「技術力を試したいという思いと、やっかいな仕事を引き受けてしまったという思い」。雅嗣の気持ちは揺れていた。当時の設備は10キロメートルが限界。それ以上の長尺異形線を製作するには、3億円の投資と金型の内製、新たな材料開発が必要だった。

深海の水圧に耐えるには、通常の3倍の強度を持つ鉄が必要。しかし硬い鉄は溶接性が低下するため、試作していた材料では実際に長距離を結べない。このため雅嗣は、材料を購入していた新日本製鉄(現新日鉄住金)に材料開発を依頼した。

【山が動き始めた】

「ナミテイには荷が重いのではないか。大手に話を持ちかけ、一部を下請けしたらどうだ」。恐らく心配してくれたであろう担当者の助言。だが、雅嗣は納得がいかない。

しばらく悶々(もんもん)とする日々が続いたが突破口が訪れる。「面白い」と、話を聞いた新日鉄の当時の役員の“鶴の一声”で大きな山が動き始めた。(敬称略)

(2017/8/9 05:00)

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