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[ 中小・ベンチャー ]
(2017/8/16 05:00)
2017年度の最低賃金が16年度に続き大幅に引き上がることが決まった。10月にも適用される。全国平均で1時間当たり25円という上げ幅は、消費を刺激し経済の好循環を促す狙いがある。一方で、中小企業は人件費の上昇という負担をかかえることになる。人手不足も重なり多くの企業は賃金の引き上げを検討しつつ、自動化の進展でその影響を最小限に抑える努力を進めている。(中小企業取材班)
【自動化推進】
ユー・イー・エス(堺市堺区)は、最低賃金の改定を見据え9月から和歌山工場(和歌山県上富田町)のアルバイト、パートの時給を上げる予定。その一方で自動化ラインやロボットなどで無人化、自動化を推進する。上田俊也社長は「利益が出ればさらに機械化を進める」と、人のアイデアと機械化で勝負し、賃金上昇にも備える。
大武・ルート工業(岩手県一関市)も賃金上昇と人手不足に対応し、ロボットや生産システムの導入による省力化、効率化を進めている。すでに自社の従業員には改定後の最低賃金以上の給与を支払っているが外注先も賃金を上げれば「値上げ依頼が来るかもしれない」と太田貴子常務は話す。
【将来見据え】
北海道の最低賃金は24円の引き上げとなる。反映されれば810円と初めて800円台となる。ただ、道内モノづくり企業では冷静な見方も多い。
アクト(北海道帯広市)の内海洋社長は「パートでも時給1000円以上の時代が来ると想定している。優秀な人材はきちんと評価をし、役職者に登用することもある」と話す。シンセメック(同石狩市)の松本英二会長も「最低賃金が上がったからどうこうということはない」ときっぱり。優秀な人材確保に向けた賃金形態など将来を見越した対応を進めている。
【「スピード」懸念】
最低賃金が全国最低のDランクにあたる沖縄県。今回は22―23円の引き上げとなる見通し。沖縄ハム総合食品(沖縄県読谷村)の長濱徳勝社長は「沖縄では(賃金上昇による)個人消費への波及が比較的望める」とみる。
人手不足が課題になっていることもあり、給与相場の上昇にはついて行かざるを得ないのが実情だ。ただ「極端なスピードで(最低賃金の)引き上げが続くと中小企業には厳しい」(長濱社長)と不安を隠さない。
最低賃金にこだわらず独自の賃金体系を重視すべきだとの声も多い。「従業員の納得が大前提」と話す浜野製作所(東京都墨田区)の浜野慶一社長は、新入社員からベテランまで全従業員が参加し意見できる評価査定会議を開いている。社員42人中25人が参加した会議の結果、今年は7月末に全社員昇給を決めた。
「給与は従業員の生活を守るもの。違法企業は別として、国が賃金などの指令を出すのは今の時代に合うのだろうか」と浜野社長は疑問を投げかける。その上で「良い人材を求めるなら国や行政に言われずとも、経営者が自ら考えて打開策に取り組むべき」と語る。
(2017/8/16 05:00)