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[ 科学技術・大学 ]
(2017/8/18 05:00)
柔らかく膨らむアクチュエーターが注目されている。ビニールを重ねて熱で封止し、その隙間に空気や液体を入れて膨らませており、アクチュエーターとしては動きの速さや精密さに課題は残る。しかし、風船や浮輪のような部材でシステムを構成できるため、人をけがさせる心配がない。人が触れるソフトロボットや、着るアシストスーツに広がる可能性がある。(小寺貴之)
【起き上がり支援】
筑波大学の鈴木健嗣教授と門根秀樹助教らは、脳性まひといった身体を思うように動かせない小児のために、寝返りや起き上がりを支援するソフトアシストスーツを開発した。
アクチュエーターは塩ビシートを熱溶着した空気袋だ。アコーディオンのように空気袋をつなげ、膨らませることで身体を持ち上げる。空気袋を単純に連結すると真っすぐ膨らむが、中心からずらして連結すれば斜めに膨らんで曲げ方向の力が発生する仕組みだ。
小児への支援では、まず寝ている状態から片腕を持ち上げて、身体を横に倒し、そこから上半身を起き上がらせる。門根助教は、「寝ている状態から直接上半身を起こすよりも安定して小さな力で起こせる」と説明する。
腕上げで1袋、横転で3袋、上半身起こしで4袋のアクチュエーターがタイミングよく順番に膨らんでいく。空気袋が膨らむ順番は、空気の流路で制御した。
内部に小さな穴の開いたコネクターを用意し、ポンプからの圧力を減衰させる。門根助教は、「コネクターの数で膨らむ順番が決まる。複雑な空圧回路は要らない」と胸を張る。1―2年をめどに臨床現場で実証する。
【動く折り紙】
東京大学の新山龍馬講師と川原圭博准教授らは、密封袋の中に低温で気化する有機溶媒を閉じ込めてアクチュエーターに利用している。密封袋に銀インクで電熱線を配線し、加熱して有機溶媒を気化して動かしている。静電容量センサーやアンテナ、アクチュエーターなどを組み合わせたシステムを印刷技術によって作れる。
新山講師は「動く折り紙」と例える。実際に指先でゆっくりと羽ばたくチョウを作製した。新山講師は「印刷したらパウチ(溶着封止)して、ハサミで切るだけ。折り紙感覚で動くソフトロボットが作れる」と説明する。
8センチ×2・5センチメートルのアクチュエーターで0・1ニュートンのトルクを出せた。可動角度は90度。重さはわずか3グラム。有機溶媒の沸点は35―80度Cの範囲で調整でき、体温や気温にあわせて駆動する。たくさんの折り紙ロボを窓につるせば、「温度に応じて開閉するブラインド」といった使い方も可能だ。
単純な仕組みで駆動し簡単に作れるため、ユーザーが自身でシステムを作れる。アイデア次第で可能性はいくらでも広がる。
新山講師は、「小学生でも回路を描いて実際に動かすところまでは簡単。理科やロボットを好きになるきっかけになるだろう」と期待する。
【性能検証進む】
膨らむアクチュエーターは簡単に作れる反面、精密制御は難しかった。アクチュエーターとしての性能検証が進み、システム化やアプリケーション開発が花開こうとしている。日曜大工のようにソフトロボを作る日はすぐそこまで来ている。
(2017/8/18 05:00)
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