[ オピニオン ]
(2017/9/12 05:00)
戦国武将・毛利元就の城があった広島県安芸高田市に、遅めの夏休みを利用して神楽を見に行った。昔から神楽が盛んな地域で、近隣の安芸太田町、北広島町を含む3市町に100ほどの神楽団がある。
訪ねたのは、東京ドームの屋根と同じ膜を張った3000人収容の「神楽ドーム」や、神楽の歴史や伝統を紹介する資料館、神楽面の絵付けができる体験工房、さらには温泉や旅館もある総合施設だ。神楽を売りとする施設は珍しい。
神楽はもともと秋の実りに感謝、奉納する舞に、神話や伝説を取り入れた民俗芸能だ。この地域の神楽は島根県の出雲・石見地方をはじめ、九州などの影響を受けたと言われ、古くは平安時代に遡(さかのぼ)るという話もある。
公演は笛や太鼓の調子にきらびやかな衣装による舞、プロ顔負けのあっと驚く変身、幕あいでの巧みな話術など、見る者を魅了した。演者が普段、会社員や団体職員とは思えないほど、素晴らしい演技に正直驚いた。
神楽が舞えるこの地域をいつまでも残したいとの真剣な思いが感じられ、一過性の町おこしの一つと軽く考えていた自分を悔いた。そろそろ秋祭りが始まる。どの祭りも思いは同じ。そう考えると、無性に故郷の祭りが恋しくなった。
(2017/9/12 05:00)