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[ 商社・流通・サービス ]
(2017/9/16 07:30)
世界市場(東京都港区、村田卓弥社長、03・5785・3968)は、日本産の野菜や果物といった青果物の輸出を促すため、出荷物の鮮度を保つ独自のコールドチェーン(低温流通体系)を確立する。メーンの仕向地である香港を対象に実証実験に着手。国内にある青果物の集荷場から現地の納品先まで、青果物の鮮度が落ちにくいとされる摂氏5度前後の環境を維持しながら運ぶ仕組みを複数パターン検討する。費用対効果などを分析した上で、最も適したものを選び、今後、それを運用していく構えだ。
3製品を試験導入
村田社長は「たとえ現地の競合商品に比べて割高でも、日本産の青果物は人気がある。その上で、これまで以上の鮮度があれば、ますます買ってもらえるようになる」とし、早期のコールドチェーン確立に向けた思いを言葉にする。
9月中に、独自に考案したコールチェーンの実証実験に着手する。村田社長によると、鮮度を維持するには重要な条件が二つあり、「まず青果物を一定の温度で運ぶこと。そして青果物の呼吸を抑えること」という。
それを踏まえ、住友ベークライトが開発した青果物の鮮度保持包装「P—プラス」、大日本印刷(DNP)の断熱ボックス、アイ・ティ・イー(ITE)の高機能保冷剤「アイスバッテリー」の3製品をコールドチェーンの仕組みに取り入れて試す。
費用対効果など分析
P—プラスで青果物の呼吸を抑える。断熱ボックスとアイスバッテリーを使い、輸送中の青果物を一定温度内で管理する。
実証実験では、集荷場に集まった香港向けの青果物をP—プラスで梱包。それをアイスバッテリーと一緒に断熱ボックスに入れ、青果物の呼吸を抑えながら摂氏5度に保てるようにする。コンテナに入れ、船で現地に運び、倉庫に収容する。
コンテナに入れる前にいったん梱包を解く。コンテナと倉庫はいずれも青果物を低温に保つ機能を備えているためだ。物流の最終工程となる「ラストワンマイル」で、再度、P−プラスで梱包し、現地の販売店などに卸す流れ。
コールドチェーンに取り入れた3製品が鮮度維持にもたらす効果を確認する。さらに最も費用対効果がある組み合わせについて分析する。「ここで生じる追加コストが、歩留まりと比べた場合、投資に値するか見極める」(村田社長)。
輸出・販売システムの訴求力アップ
世界市場は、日本の農家が手軽に海外販売できるようするため、直接海外のバイヤーとやり取りできるITプラットフォーム「ニッポンイチバ(NIPPON ICHIBA)」を軸にした輸出・販売システムの本格稼働を急いでいる。このシステムは、流通にかかる時間とコストを抑えることが売りだ。これまで流通に介在していた農業協同組合(JA)や市場、商社など、複数の中間事業者が果たしていた役割を、世界市場が一括して引き受けることで可能にした。
村田社長は「新しいシステムを作りましたので使ってくださいと言っても、誰も使わないし、使いたくならない。この仕組みを使えば(日本産の青果物が)売れるということを目に見える形で示す必要がある」とし、販売実績でこのシステムを訴求する考えだ。コールドチェーンを確立すれば、日本産の青果物が、これまでに比べて、より鮮度ある状態で店先に並ぶようになり、売り上げアップにつながる。このシステムの活用を促す大きな力になりそうだ。
(2017/9/16 07:30)