[ 政治・経済 ]

観光庁、観光財源確保へ議論‐「出国税」導入を軸に

(2017/9/22 05:00)

  • 訪日外国人客の増加に対応し観光庁が観光財源確保に向け議論を本格化させた(イメージ)

観光庁が観光財源確保に向け、議論を本格化させた。訪日外国人客の増加に対応した環境整備に使うのが狙い。日本から海外に渡航するすべての人に課税する「出国税」の導入案が軸になるもようだ。旅行会社や航空会社らから意見を聴取するとともに、有識者による議論を集中的に行い、今秋中にも方向性を打ち出す。2018年度税制改正に間に合わせたい考えだ。(小林広幸)

【早期取りまとめ】

政府が掲げる20年の訪日外国人客4000万人を実現するには、一層の受け入れ環境整備が欠かせない。田村明比古観光庁長官は「レベルの高い課題が出てきている」と話す。都市部に限らず地方でも、多言語対応の案内や公衆無線LANサービスなどの充実が急がれる。

こうした施策の財源について、政府は受益者負担を求めるべきだと考えを示していた。観光庁内での検討を経て、有識者による「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」を設置。石井啓一国土交通相は「外部の意見を取り込み、具体化を進める」と述べ、早期の取りまとめに意欲を見せた。

【「受益者」が論点】

15日に開いた検討会の第一回会合で観光庁が提示した論点には、そもそも「受益者とは誰か」という問題が挙がった。訪日客に限られるのか、訪日客で潤う観光業も含まれるのか。経済波及効果を考えると受益者は、限定されないというのも一つの見方ではある。

財源の使途や範囲も確定していない。観光インフラはハード面だけでなく、コミュニケーション基盤や情報提供も含まれる。文化財や公園など観光素材の発進力強化や、訪日プロモーションといった誘客活動、観光振興を担う人材育成にも振り向けるのか。これらの議論もこれからだ。

盛り上がる訪日意欲に水を差すのは避けたいところで、田村長官は「(訪日客を)減らしてしまえば本末転倒」と指摘する。検討の俎上(そじょう)に上がる「出国税」は、訪日客に限定して課すことができない。税には“内外無差別”の原則があるため、導入が決まれば、海外に出かける国民の負担増にもつながる。

第一回会合後に観光庁の担当者は「(出席者に財源の)必要性は理解頂いた」と説明した。議論すべき問題は山積し、観光業界からは慎重を求める声も上がる。田村長官は「全体のバランスが問題。多元連立方程式を解くようなもの」と示す。検討会には、限られた時間で、多くの関係者が納得できる“解”を導き出すための知恵が求められている。

(2017/9/22 05:00)

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