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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/13 05:00)
地上の観測精度向上/衛星開発の小型・低コスト化
一般的な衛星の運用高度より低い地球上空200キロ―300キロメートルの「超低高度」での衛星活用が注目されている。低軌道では光学センサーによる地上の観測精度などが上がるため、小型で低コストの衛星開発につながると期待される。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、超低高度での地球観測衛星の開発計画を進めており、その実証機として2017年度中に超低高度衛星技術試験機「つばめ」を打ち上げる予定だ。(冨井哲雄)
超低高度での衛星運用の目的は地上の高解像度観測にある。軌道の高度を下げるだけで、光学センサーの空間解像度やレーダーの信号雑音比(S/N比)が向上する。センサーの小型化や省電力化により、開発する衛星を小型・低コスト化できる。
【大きな課題】
ただ、超低高度軌道での衛星運用には大きな課題がある。一般的な衛星が周回するのは地球の上空600キロ―800キロメートルだが、高度が200キロ―300キロメートルまで下がると、大気密度が高くなり大気の抵抗が1000倍にも急増する。この高度では重力で衛星が大気に突入してしまうため、イオンエンジンを噴射して衛星の軌道高度を常に保つ必要がある。
計画では、つばめはロケットからの軌道投入後、まず高度268キロメートルまで少しずつ高度を落とす。その後、大気の抵抗による高度低下に逆らうため、イオンエンジンを噴射して高度を保つ。これまで高度200キロメートル付近を定常飛行する衛星は存在しないという。この軌道保持のための衛星運用が今回最大のミッションとなる。
そのほか、超低高度領域に存在する「原子状酸素」による材料劣化の観察や、光学センサーでの撮像実験なども行う。
【空白領域カバー】
JAXAのSLATSプロジェクトチームの佐々木雅範プロジェクトマネージャは、「超低高度衛星は、高い軌道にある人工衛星と飛行機の間の領域をカバーする。今までの空白領域の観測が期待できる」と強調する。
さらに「超低高度衛星は地上の特定の場所をピンポイントで観察できる。光学センサーや合成開口レーダー(SAR)を載せた衛星と組み合わせれば、災害対応に役立てられる。新市場を開拓できるのではないか」と期待する。つばめの総開発費は約34億円。国産ロケット「H2A」で気候変動観測衛星「しきさい」と相乗りし、17年度中に打ち上げる。機体の重量は380キログラム、展開状態の大きさは2・5メートル×5・2メートル×0・9メートル。
明星電気、新日本電子(東京都町田市)、神戸大学、成蹊大学、九州大学、京都大学などがプロジェクトに参画する。
(2017/10/13 05:00)
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