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[ 医療・健康・食品 ]
(2017/10/16 05:00)
製薬各社がクライオ電子顕微鏡を活用した創薬研究を加速している。16社が参加する「創薬産業構造解析コンソーシアム」において、クライオ電顕関連の情報共有を行える枠組みを構築した。参加企業のうち武田薬品工業、富士フイルム、エーザイ、中外製薬は、大阪大学蛋白質研究所に設置されたクライオ電顕を近く利用する方向で準備を進める。阪大は製薬企業の力を借りてクライオ電顕の普及に弾みをつける。
今年のノーベル化学賞の受賞テーマにもなったクライオ電顕は、生体分子を溶かした水溶液を凍らせて電子線を照射し、画像を得る仕組み。たんぱく質などの立体構造を調べられる。創薬研究では主に創薬標的たんぱく質と医薬品候補化合物の複合体の3次元構造解析を行い、候補化合物の構造最適化を図る用途で使われる。
従来の解析手法であるX線結晶構造解析は、試料の結晶化をする手間がかかり、結晶を作れない場合は使えなかった。
ただクライオ電顕は企業が単独で導入するにはコストが高いと考えられており、製薬各社は同コンソーシアムを通じて共同利用の枠組みを構築した。富士フイルムとエーザイ、中外製薬は今後1年以内をめどに阪大のクライオ電顕を使い始める計画。武田薬品も同様とみられる。開始時期が未定の企業からも「今後の利用を想定してコンソーシアムに参加した」(旭化成ファーマ)との声がある。
阪大はクライオ電顕の普及を促進する。「世界的にはクライオ電顕による生体分子の構造解析が進んでいるが、日本では共同利用施設がない。当研究所がその役目を負い、製薬企業にも門戸を開いて幅広く施設の活用を目指す」(蛋白質研究所の岩崎憲治准教授)。
日本製薬工業協会によると、2010―14年度の間、基礎研究段階で合成された化合物が最終的に承認へ至る確率は2万4553分の1だった。製薬各社は創薬研究の効率向上が課題となっている。
(2017/10/16 05:00)