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[ エレクトロニクス ]
(2017/10/24 19:30)
(ブルームバーグ)東芝から半導体メモリー事業を買収する米投資会社ベインキャピタル連合は、ウエスタンデジタル(WD)に対し、もし東芝との合弁事業を続けたなら、買収契約を阻害するような動きはやめ、売却差し止めの申し立てを取り下げるよう警告した。
ベイン連合は東芝から半導体子会社「東芝メモリ」を2兆円で買収することで合意。しかしWDは、メモリー事業の合弁相手として事業に関連する取引については同社の合意が必要だとし米国の裁判所に売却の差し止めを求めている。
ベインのマネージングディレクター、デイビッド・グロスロー氏はインタビューで、WDの申し立てに対し強く異論を唱えた。WDの異議申し立ては同社の権利を偽って主張しており、メモリー事業の売買契約はしっかりとしたもので同事業への脅威にはならないとの見解を示した。その上で、同氏はWDがアグレッシブな戦術を取っているため、フラッシュメモリー製品に対する同社のアクセスは危うくなっていると指摘した。
グロスロー氏は「時間はWDには味方していない」と発言。「関係修復に向けた正しい動きをすれば、修復できないわけではない」と話した。
アップル、シーゲイト・テクノロジー、SKハイニックス、東芝などが参画するベイン連合は売買契約に関してよくある質問集を取りまとめた。ブルームバーグが閲覧したこのリストによると、16問のうち9問がWDに関連した内容で、WDが東芝との契約内容を「読み間違えているか、事実を不正確に伝えているかのどちらか」といった表現が使われているほか、3つの合弁契約が2021年と25年、29年に失効し、それ以降WDがフラッシュメモリー生産に関する権利を失う可能性が示唆されている。
ベインはWDに対し、和解して買収契約の履行に立ちはだかる障害を取り除くよう働き掛けている。東芝は上場廃止基準である2年連続の債務超過を回避するため、来年3月末までに東芝メモリの売却を完了することを目指している。売却には独占禁止法の審査で当局からの承認も必要だ。
法的な措置
売買契約の成立を受けてWD側は法的な措置をちらつかせたり、売却差し止め請求の最終的判断には19年まで時間を要する可能性を示したりしている。さらに、国際仲裁裁判所に暫定的な差し止めを求める考えも表明した。
WDの弁護士を務めるジョン・ヒューストン氏は先月、「東芝側に建設的な方法で合弁相手との問題を解決したいという考えがない限り、拘束力のある仲裁に向けた手段を引き続き取る方針だ」と話した。WDはサンディスクを昨年に買収し、東芝の合弁事業を手に入れた。
ベインのグロスロー氏は「サンディスクを買収したとき、多分彼らは自分たちが買ったものの本質を正しく理解していなかったのではないかと思う」と指摘。「われわれは合弁契約の本質をしっかりと理解するために膨大な量の調査を実施した。買われたのは生産設備であり、両社が新しい合弁事業を準備できなければ、すべてご破算になってしまう」と述べた。
同氏によると東芝が所有しているのは工場や処理技術、従業員。既存の合弁契約が失効してしまえば、合弁会社が保有している生産設備は時代遅れとなり、価値のないものになってしまうという。そのため、半導体業界のよう日進月歩の業界では、新たな投資や新しい合弁契約が締結されることが不可欠だと強調した。「だから時間はWDには味方していないのだ」と繰り返した。
(2017/10/24 19:30)