[ 金融・商況 ]
(2017/10/26 05:00)
商工中金は25日、危機対応業務をめぐる不正融資に関する内部全件調査で、全100営業店中97店、4609件の不正が判明したと発表した。経済産業省、財務省、金融庁は同日、商工中金の調査結果を受け、2度目の業務改善命令を出した。責任の所在を明らかにするため、安達健祐社長の役員報酬を無報酬にするなどの減額処分を発表。職員813人も処分した。同日の会見で安達社長は退任を表明した。
【業務改善命令】
「組織の信頼を根底から揺るがす重大な事態と深刻に受けとめている」。安達社長は会見でこう陳謝した。
商工中金は5月に最初の業務改善命令を受け全件調査を開始。2008年10月の危機対応業務の取り扱い開始から16年11月末までに貸し出した危機対応融資21万9923口座(既に公表した調査結果を含む)、融資実行額で12兆3444億円を対象とした。その結果、融資実行額で約2646億円の不正があった。改ざんなどの不正行為者が444人に及んだ。
安達社長は「危機対応業務を収益拡大の武器として利用していた。危機対応業務を業績評価に組み込んで現場にプレッシャーを与えてしまった」と不正行為の原因を結論づけた。危機対応業務以外でも毎月実施の「中小企業月次景況観測」や、預金の新規口座開設などでも不正が認められるなど不正が広範囲に及んでいたことが明らかになった。
【経営管理体制】
経産省などは内部全件調査結果を受け、2度目の業務改善命令を出した。監査機能の強化や抜本的再発防止策の策定、民業補完の趣旨を踏まえた持続可能なビジネスモデルの策定、外部人材の登用を含む新たな経営管理体制の構築などを指示した。
世耕弘成経産相は同日、「解体的出直しをすることが必要不可欠」と断じた上で「人事刷新は避けて通れない。(安達社長の)後任は有識者検討会の内容を踏まえて民間で経営経験のある、しかるべき方を選定してほしい」と明言した。
責任の所在を明確にするため、商工中金は安達社長の任期中は無報酬に、稲垣光隆副社長と菊地慶幸副社長は6カ月間、月額報酬を50%にするなどの処分を決定した。また不正行為者とその上司ら、全職員3886人中計813人を処分対象とした。安達社長は「今後のガバナンスとビジネスモデルを有識者の議論を踏まえて抜本的な改善していく」と述べた。
【方向性を議論】
今後、世耕経産相の指示により設置する「商工中金の在り方検討会」でガバナンス強化策や危機対応業務の見直し、ビジネスモデルの方向性を議論する。
大和総研の川村雄介副理事長を座長とし、日本総合研究所の翁百合副理事長、経営共創基盤の冨山和彦代表取締役最高経営責任者(CEO)らがメンバーとして参加する。年内をめどに取りまとめる。
今回の不正事案の発生を受け、経産省は世耕経産相が2カ月分の給与を自主返納するほか、嶋田隆事務次官と安藤久佳中小企業庁長官がそれぞれ2カ月分の給与の10%を自主返納する。
商工中金を所管する経産省・中小企業庁は監督機能を強化するため、18年度にも中小企業庁金融課を再編し、「企画」と「検査」機能を分離する方針だ。
(2017/10/26 05:00)
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