[ ICT ]
(2017/11/15 05:00)
米HPは、企業などが業務改善に利用する商用の仮想現実(VR)システム事業を拡大する。このほど、背負えるVRシステムを投入した。VRを使って軍や救急隊の訓練を行ったり、大型構造物のデザインを共有したりすることが可能で、実物の利用に比べてコストを削減できる。これまでディスプレー画面を通して見ていたコンピューターグラフィックス(CG)の世界に人が入り込むことで、仕事の流れが大きく変わるかもしれない。(梶原洵子)
「ゲームなどの個人向けVRよりも商用VRは大きな市場に拡大する可能性がある」。米HPでワークステーションを担当するバイスプレジデントのチャビア・ガルシア氏は、こう力説する。商用VRの用途は製品開発や生産設備の設計に加え、建築デザインの可視化、新しい販売体験など幅広い。「2019年までに大手企業の20%が導入する」(アナリスト)との指摘もある。
新車のVRショールームでは「オプション(を搭載する顧客)が増え、より高価な車が売れるようになった」(ガルシア氏)と、その効果を強調する。例えばVRを通じ、レザーシートや限定塗装などを実車に近い状態で見ることができると、カタログよりも魅力が伝わりやすい。
HPは市場拡大の波に乗るため、ワークステーション「Z」シリーズから、背中に装着し持ち運べるVR対応製品「HP Z VRバックパック G1ワークステーション」を発売した。日本での価格は58万円(消費税抜き)。HPは「オーメン」や「エリート」など複数のシリーズでVRに対応しており、中でもワークステーションのZはコンテンツ作成・体験が1台でできるハイパフォーマンスなシリーズだ。ガルシア氏は「最もパワフルなウエアラブル」と胸を張る。
ワークステーションを背負うと、やや不思議な格好になるが、実はVRの不便さを解消できる利点がある。VRは体を動かしながら体験することが多いが、体を大きく動かしても眼鏡型端末とVRシステムを接続するコードに動きを制限されにくい。事前の利用実験では、12人の救急隊員がバスケットコートの広さで一度にVRの訓練を行うなど、機動力の高さを証明できた。
また世界各地にいる車の設計者は、同じ場所で試作車を見るように、VRでデザインを共有することもできる。ワークステーション自体は高価だが、人の移動や実物の作成などのコストと比較すると、ワークフロー全体のコストを下げられる。
現在は、VRの世界でメモを取る技術についても開発が進められている。VRの紙とペンを動かして文字を書く、または音声をメモに起こすという技術が実現していけば、VRの中で自然に仕事ができるようになるだろう。
「今は市場革命の初期段階。VRで人とコンピューターのやりとりが変われば、さらなる進化が予想される」とガルシア氏は語る。VRのイノベーションが待たれるが、まずはデザイナーやクリエイターの欠かせないツールになれるかどうかが試金石となる。
(2017/11/15 05:00)
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