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[ 科学技術・大学 ]
(2017/12/10 10:00)
3D(3次元)プリンティングの技術を使い、10秒以内という短い時間で1辺6ミリメートルの小さな樹脂部品を製造する手法を米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)などの研究チームが開発した。液体の光硬化性樹脂に3方向からレーザー光を当て、目的の立体形状を一気に作り出す。対象物の大きさや精度面などでの課題はあるが、3Dプリンティングの高速化・低コスト化に道を開く可能性がある。
現在の3Dプリンターはレーザーで1層ずつ樹脂を硬化させ、それらを積み重ねて立体形状を作り出すやり方が主流。切削加工や射出成形では作るのが難しい形状を一品ずつ製作できるものの、完成させるまで数時間から物によっては数日かかっていた。
それに対し、この「ボリューメトリック3Dプリンティング」と呼ばれる手法では、感光性液状樹脂で満たされた直方体型の透明容器に正面、横、下の3方向から、それぞれの投影イメージによるレーザー光を同時照射する。透明容器の右横および下にはプリズムミラーが配置され、正面から受けた横用・下用のレーザー光をそれぞれ90度曲げて容器に入射させる。
こうすることで容器内部にホログラムのような3Dイメージを形成。3方向からの光が交差する部分に強い光が当たることで、その部分が早く固まって3D形状ができる。あとは残った液状樹脂を排出して部品を取り出せばいい。
積層しないため大幅な高速化やコスト低下が期待される半面、課題も残されている。まず成形精度。ほかにも、部品サイズが大きくなるとレーザー光が液状樹脂を通過する間に光が吸収され、レーザー強度の均一性の問題が出てくる。そもそも複雑な形状になると光が何度も交差することになるため、形状製作が難しいという。
こうしたことから、研究チームでは実用化に向け、樹脂の材料開発はもちろん、光の強度や当て方といったエンジニアリング面での改善が必要としている。
カリフォルニア大学バークレー校、ロチェスター大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)との共同研究。成果はオンライン科学誌サイエンス・アドバンシーズに12月8日掲載された。
(2017/12/10 10:00)