- トップ
- 科学技術・大学ニュース
- 記事詳細
[ 科学技術・大学 ]
(2017/12/23 17:30)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は23日10時26分、気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」を、高度化仕様の国産ロケット「H2A37号機」で種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げた。打ち上げ16分後にしきさいを、1時間48分後につばめを予定の軌道に入れ、打ち上げは成功した。
今回、高度が異なる2種類の軌道へH2Aから衛星を1個ずつ放出することに日本のロケットとして初めて成功した。
JAXAの奥村直樹理事長は「異なる軌道に対しそれぞれ衛星を投入することに成功し、基幹ロケットの高度化を実現できた。今後、2020年度の打ち上げを目指す新型基幹ロケット『H3』の開発と打ち上げを行っていきたい」と強調した。
三菱重工の阿部直彦執行役員は「衛星を相乗りさせてもロケット1機の製造や打ち上げのコストは変わらない。衛星の重量に応じた料金を払えば済むため、ユーザー側から見るとメリットは大きい。ビジネスの幅が広がっていくだろう」とコメント。また打ち上げの執行責任者である同社の二村幸基執行役員フェローは「打ち上げ費用の観点でH2Aに乗りづらかった顧客に提案しやすくなる」と期待を寄せる。
しきさいは19種類の色を観測できるセンサーを搭載し、地球の雲や大気中のちり(エアロゾル)、植生などを観測、地球の環境を調べる。地球温暖化の予測に必要なデータの収集が期待できる。
一方、つばめにより超低高度域での衛星運用技術を実証する。低軌道では光学センサーなどでの地上の観測精度が向上するため、小型で低コストの衛星開発につながると期待される。しきさいは打ち上げを含む開発費が322億円、つばめの開発費は34億円。
今回の打ち上げで、H2Aは37機中36機の打ち上げに成功し、成功率は97.3%。17年のH2Aの打ち上げは6機で過去最多となった。その要因としてロケットの打ち上げ間隔の短縮が挙げられる。奥村JAXA理事長は「打ち上げ間隔の短縮は地道な努力によるもの。これに満足することなく創意工夫を重ねていきたい」と語った。
(2017/12/23 17:30)