[ トピックス ]
(2018/1/4 05:00)
《増田賞》
【ファナック/製造現場のIoT化とAI化を推進するオープンプラットフォーム FIELD system】
メーカーに関わらず製造現場のあらゆる機器をつないでデータの収集や活用ができる工場用IoT(モノのインターネット)基盤(プラットフォーム)。現場(エッジ)の近くでデータを処理する「エッジヘビー」の思想を取り入れ、リアルタイム性の高い制御を実現する。データの解析に人工知能(AI)を活用でき、例えば産業用ロボットが自らルールを学習して自律的に動き、熟練者の技能を学ぶなど高度な自動化も可能になる。基盤上で動くアプリケーションソフトはソフト開発会社など第三者企業が開発・販売できるオープンな環境を整備。顧客は現場に応じてアプリを柔軟に組み合わせることで、生産性の向上や予防保全などを実現できる。
《本賞》
【イシダ/ダイナミック計量システム IMAS―G】
ロボットアームなどでワーク(対象物)を移動させる際、発生する力と加速度の関係から質量を計量するシステム。従来は計量時にロボットとは別に計量器が必要だったほか、ワークが安定するまで待つ必要があった。ワーク搬送中という不安定な状態で、質量を計量できるようにした。
2015年4月に定格荷重が16キログラムのタイプを発売。16年11月には、ワークをパレットに自動積載する大型ロボットに取り付けが可能な同100キログラムタイプを発売した。産業用ロボットを活用した搬送は、ワークに応じた保持部分を選べば各種分野に応用できる。例えば包装・梱包(こんぽう)した商品の内容量の質量チェック、農産物の質量による選別などに使える。
【NEC/NECの新プラットフォーム 「SX―Aurora TSUBASA」】
約30年にわたって開発してきたスーパーコンピューター技術を応用し、高度データ処理のためのプラットフォームを開発した。従来の複雑な科学技術計算用途だけでなく、人工知能(AI)やビッグデータ(大量データ)解析などにも、高性能な「ベクトルコンピューター」を使える。
世界トップ級のコア性能を持つベクトルプロセッサーをカード型のベクトルエンジンに搭載した。小型サーバーから大規模なデータセンター向けまで柔軟なシステム構築が可能だ。
NECは世界唯一のベクトルコンピューターメーカー。これまで特殊な計算用途などに限られた同コンピューターを、安価かつ手軽に使えるようにしたことで、市場が一気に広がる可能性がある。
【オークマ/スマートファクトリーの核となるスマートマシン MU―S600V】
複数台を連結する際、外部の搬送装置なしで加工対象物(ワーク)を搬送できる5軸立型マシニングセンターだ。内部のロボットにより、左右の2台のテーブル同士でワークを受け渡せるため、搬送装置が不要だ。2台並べる場合、搬送装置が必要な従来機種より、設置面積を6割削減できる。
開発・試作段階では1台で、量産開始から増産に合わせ、台数を増やせる。面積生産性は従来機種の1.4倍。広い加工領域と軸ストロークで、直径600ミリメートルの大物部品も加工できる。
人工知能(AI)の活用も特徴だ。送り軸の状態をAIで診断し、ボールネジや支持軸受の不具合を調べられる。故障による停止を未然に防げる。
【川崎重工業/船舶運航管理支援システム「SOPass」】
ビッグデータ(大量データ)を活用した船舶運航管理支援システム。クラウド型で提供し、各種データを収集・分析して船舶の運航を支援する機械学習機能なども付加した。
クラウドサーバーに蓄積した航海時の燃料消費量や気象情報、船体の状態といった各種データを分析・学習。多様な船舶に対し、最小燃料消費量となる航路を提案する。燃費や船速、メンテナンス管理などの予測も可能で、運航コストの低減や安全性を向上する。
液化天然ガス(LNG)運搬船向けには、輸送中に自然蒸発する天然ガス(ボイルオフガス)を管理する機能を追加した。ボイルオフガスを最適に管理できる機能は珍しい。新造船に加え、既存船への対応も可能で、汎用(はんよう)性に優れる。
【シャープ/8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K」】
民生用機器として、世界で初めてフルハイビジョン(HD)の16倍の解像度を持つ「8K」映像に対応した70型液晶テレビ。8Kは肉眼に匹敵する高精細映像のため、視聴者は立体映像と錯覚するほどの没入感を得られるという。消費税抜きの市場価格はおよそ100万円。
国内で8K実用放送が始まるのは2018年12月の予定。だが現時点でも、フルHDの地上デジタル放送やブルーレイディスクで映画などを視聴する際、8Kテレビに内蔵した画像処理技術「アップコンバート」の機能を使い、8K相当の解像度に変換。高画質な映像を体験できる。
18年内に8K放送を見るのに必要な、外付けチューナーも発売する計画だ。
【ダイヘン/高能率アーク溶接システム「D―Arc」】
最大板厚19ミリメートル鋼板の1パス(1回)溶接を、業界で初めて可能としたアーク溶接システム。従来の溶接法と比べ、生産コストを85%削減できる。6ミリメートル以上の厚板溶接は従来、複数回の溶接をする多層盛りが必要。板厚19ミリメートルの場合は6回溶接していた。建設機械や造船、建築・鉄骨などに用いる厚板溶接作業の高効率化、高品質化を実現する新システムの顧客評価は高い。
高出力溶接電源、高電流対応水冷トーチなどの専用構成機器開発と、独自の精密波形制御で実現した。前工程の開先加工面積、溶接ワイヤ消費量、溶接時間、シールドガス消費量を従来法に比べて大幅に削減できる。溶接回数減で溶接対象の熱変形は少なく、後工程の修正作業も短縮する。
【日立製作所/iPS細胞大量自動培養装置】
再生医療で用いられるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を大量に自動培養できる。従来、熟練者が手作業で行ってきた細胞培養を独自技術により自動化に成功した。細胞製造の自動化・量産化が可能となり、再生医療の普及を後押しする。
培養容器やボトル、流路(チューブ)を連結した完全閉鎖系モジュールを採用、高い無菌性を確保した。またモジュールも単回使用方式のため、細胞や異物などの汚染リスクを排除した。iPS細胞の培養や神経細胞への分化誘導を効率的に実施でき、細胞品質の安定化や製造コストの低減に寄与する。
日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、製品化した。大日本住友製薬から受注し、納入している。
【富士通/ものづくりデジタルプレイス「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA」】
コルミナは設計から製造、保守までモノづくり現場に存在するあらゆる情報をつなげるデジタルプレイス(連携基盤)。(1)モノづくり業務に必要な各種アプリケーション(応用ソフト)(2)データを高度に分析し、さまざまなつながりをハンドリングするプラットフォーム(共通基盤)(3)工場で働く作業員の生体情報や装置の稼働データなど、生産現場の多様な情報を収集するエッジ基盤―の3階層で構成する。
モノづくり全体のデジタル革新を支援することで、熟練工が持つ知見やノウハウの共有、人材の発掘・マッチングに加え、企業間協業や共創を実現する。まずは富士通が実践してきたノウハウを土台に、150種類のサービスを提供する。
【牧野フライス製作所/5軸制御立形マシニングセンタ V80S】
高速加工と高い面品位を両立する5軸立型マシニングセンター(MC)。加工時間を放電加工による一般的な工法に比べ、最大80%削減する。金型製造のボトルネックとなる仕上げ工程の時間短縮を図り、国内金型メーカーの競争力向上に寄与する。特に自動車樹脂部品で、フロントグリルやドアパネル、センターコンソールなどの意匠面になる金型に向けた。
傾斜主軸で放電加工が必要だった箇所を置き換えられる。小型で軽量の主軸を搭載し、高速加工を可能にした。主軸を傾ける5軸機特有の動作で短い工具に対応。高さ200ミリメートルの立ち壁の加工では、長さ300ミリメートルの工具が必要だったが半分の長さにでき、切削速度、面品質を高める。
【ヤマザキマザック/高速・超高精度 同時5軸加工 門形マシニングセンタ UD―400/5X】
長時間高速での連続稼働が必要な金型加工にほぼ用途を絞った5軸立型マシニングセンターだ。主軸の回転速度は最高毎分4万5000回転で、ヤマザキマザックの製品では最速だ。高速回転時の熱対策として、主軸の軸心と外筒に冷却油を循環させる構造を採用。ボールネジの軸心にも同様の機能を持たせた。
剛性の高さも特徴だ。門型マシニングセンターをベースに開発したため、門型構造で左右対称の形状となっている。ベースやコラムの材料にはミネラルキャスト(人工グラナイト)を採用したため、減衰性が高く、振動を抑えられる。微細で精密な加工が求められる人工骨などの医療機器部品にも適用できる。
《日本力賞》
【クボタ/アグリロボトラクタ】
全地球測位システム(GPS)を用いて、無人の自動運転作業が可能なトラクター。リモコンを使い作業開始や停止を操作し、作業者が田畑周辺で監視しながら、無人機1台で耕うんや代かきができる。1人の作業者が有人機と無人機を同時に使い、2台を協調させる作業も実現。農作業の効率化や省人化、負担軽減につながる。
GPS技術を高度化し、直進時のハンドル操作が不要な自動操舵(そうだ)機能を装備。レーザースキャナーや超音波ソナーなどの安全装置を搭載し、田畑の侵入者や障害物に近づくと自動で停止する。設定された作業経路を大きく外れた場合も、自動停止する。出力は60馬力級。すでにモニター販売を始めている。
【レーザーテック/EUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置 ABICS E120】
次世代露光技術の極端紫外線(EUV)を使った微細な半導体パターン転写に対応した量産用EUVマスクブランクス(原版)の欠陥を検査・解析できる。世界で唯一、回路パターンの露光と同じ波長13.5ナノメートル(ナノは10億分の1)のEUV光を検査光源に採用した。
EUVマスクブランクスの多層膜内部にEUV光を照射し、露光時に転写する恐れのある転写性欠陥を検出する。検査時間はマスクブランクス1枚当たり45分と短時間で、幅50ナノメートル、高さ1ナノメートル相当の微小欠陥の検出を可能とした。
明視野、暗視野両方の観察機能を備え、1200倍に拡大して欠陥の形状などを確認できる。誤差20ナノメートル以下の高精度な欠陥位置読み取り性能を備える。
《モノづくり賞》
【オルガノ/純水・超純水装置「ピュアライト/ピューリックαシリーズ」】
バイオサイエンスなどの研究・分析施設向けに開発した卓上型の純水・超純水製造装置。最高で水中に含まれる全有機炭素(TOC)を1―3ppb(ppbは10億分の1)まで低減する。
純水装置は1時間当たり処理流量15リットルで活性炭フィルター、逆浸透(RO)膜、イオン交換樹脂による水処理をワンパッケージ化。タンクにためた純水を用途に応じ、超純水装置の紫外線(UV)酸化、高度に精製したイオン交換樹脂、限外濾過(UF)膜処理を循環させて高純度化する。
専用ディスペンサーは1滴分の50マイクロリットル(マイクロは100万分の1)から1分当たり2リットルまで定量を吐出。装置サイズは幅354ミリ×奥行き335ミリ×高さ448ミリメートルで共通。
【シンフォニアテクノロジー/圧電バルブシステム「DIGIVAL」】
空気(エア)の流れる量をデジタル制御できる圧電バルブシステム。従来は絞り弁による手動の流量調整だったが、圧電式(ピエゾ)振動機の制御技術を応用し、業界で初めて高分解能な流量デジタル調整を実現した。高速チップマウンターやパーツフィーダーの高機能化につながる。
業界最高速レベルの0.3ミリ秒の応答性を確保しつつ圧電素子を電子制御することで、連続10億回以上の高耐久性を達成した。バルブは1台で二つの出力を持っており、省スペース化にも貢献する。コントローラー側には外部通信機能を搭載しており、遠隔での流量設定も可能にした。スマートフォン向けなどの極小部品が増加しており高速・整列供給ニーズが高まっている。
《60回記念特別賞》
【パナソニック/車載向け温冷感センシングシステム】
自動車の運転手が感じる「暑い」「寒い」という感覚を見分ける赤外線センシングシステム(写真は中核部品のグリッドアイ)。人や物が放射する赤外線を検知し、熱の分布が分かる画像を合成する。人の表面温度と周囲の温度の差から放熱量を算出し、独自のソフトウエアにより人が感じる温冷感を見分ける。運転手の眠気を検知して居眠り運転を防ぐシステムなどに活用でき、車の自動運転にも役立つ。
エアコン向け技術を改良して車載用に耐久性を高め、計測できる温度範囲も広げた。カメラや人工知能(AI)技術を使って人の顔や目の動きを分析する技術などと組み合わせ、車載システムとして車メーカーに提案する。オフィス、学校などへの展開も視野に入れる。
《中堅・中小企業賞》
【シンク・ラボラトリー/水性インクジェットプリンター「FXIJ」】
白を含む5色を従来比2倍となる毎分40メートルの速度で印刷できるインクジェットプリンター。揮発性有機化合物(VOC)を含まない水性インクに対応した同プリンターとしては世界最速水準になるという。対応色数は5色で、印刷速度は基材と色数で変わるが、白なしでは最速毎分60メートル。
インクジェット方式の印刷速度は大量・高速印刷向けのグラビア方式と比べ遅いが、版製作が不要なため、印刷量が2000メートル以下の場合、印刷時間とコストで優位性がある。
製品サイクルの短い菓子や新製品のサンプル印刷向けに売り込む。農水産物の生産者向けなど新しい包材印刷市場を開拓できると見る。2018年内にグラビア印刷と同等の高画質を可能にする。
(2018/1/4 05:00)