[ オピニオン ]
(2018/1/19 05:00)
トランプ米政権が発足して20日で満1年を迎える。日本政府は安全保障面で日米の強固な絆を維持しつつ、通商面では不即不離の間合いを保つことで国益を最大限に追求することが期待される。
トランプ政権は反移民と反グローバル政策を公約に掲げ、米国の孤立を深めた。ただ過激発言と裏腹に、議会と司法の“緩衝材”もあって公約の多くが実現していない。むしろ4割を下回る低い政権支持率と11月の中間選挙を見据えてか、態度を軟化させた政策が少なくない。
北朝鮮との“舌戦”やエルサレムの首都容認、ロシア疑惑など国際社会に大きな火種を残すものの、離脱を表明したパリ協定は条件付きで残留を示唆。中国を通貨の不正操作国と非難しながら「一つの中国」を尊重すると発言し、同国と28兆円の商談を成立させた。
国交回復を破棄するとしたキューバとの国交は維持され、時代遅れと批判した北大西洋条約機構(NATO)を巡る発言も撤回するなど、「破壊的」とも指摘された政権公約は総じて軟化の方向に向かったといえる。
日本は安全保障面では米国との強い連携を国際社会に訴え続ける一方、通商面ではしたたかな外交が期待される。
河野太郎外相は、平昌(ピョンチャン)冬季五輪前の韓国と北朝鮮の南北会談について「核・ミサイル計画を継続するための時間稼ぎの意図がある」と警戒する。日米主導で毅然(きぜん)とした外交政策を継続してもらいたい。
一方、通商面では“ビジネス外交”を繰り広げるトランプ政権とは、付かず離れずの関係を保ちたい。トランプ大統領は昨秋のアジア歴訪で、日本に兵器購入を促し、日米経済対話は米国がくみしやすい2国間貿易交渉の実現に期待感を示した。
米国にとって対日貿易赤字の是正は、緊迫化する北朝鮮情勢や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉より優先順位は低いが楽観は禁物だ。米中間選挙を控え、脱工業化に苦しむ米中西部などの“ラストベルト”では共和党支持率が8割超にも達することを忘れてはならない。
(2018/1/19 05:00)