[ オピニオン ]
(2018/1/26 05:00)
雪の結晶を花に見立てた美しい雪華模様は、着物や茶わんなどにあしらわれ、江戸時代から日本人を魅了してきた。現在でも冬のモチーフとして、小物やパッケージデザインなどに多用され、人々に愛されている。
「雪は天から送られた手紙である」との言葉を残したのは物理学者の中谷宇吉郎。1936年(昭11)に世界で初めて人工的に雪の結晶を作り、雪氷学の礎を築いた。
中谷の次女、芙二子さんは「霧」のアーティストとして国際的に活躍する。父の影響を受けながら、自身は芸術と科学を融合した表現者になった。中谷の研究の足跡と芙二子さんによる人工霧を使った「霧の彫刻」の展覧会が、3月4日まで銀座メゾンエルメスフォーラム(東京都中央区)で開かれている。
芙二子さんが自身の進路について尋ねたとき、「自分が本当に好きなことでないと、やってもモノにならないからしょうがないよ」と父は答えたという。こうして3人の子どもはそれぞれ科学者、ピアニスト、アーティストになった。
晩年、中谷は「あと200年ぐらいこの研究を続けたい。それぐらい問題が残っている」と記したそうだ。大自然の中に身を置き、真理を探究し続けた姿は、今なお我々の心を打つ。
(2018/1/26 05:00)