[ オピニオン ]
(2018/2/16 05:00)
放置された森林の整備財源に充てる「森林環境税」の創設が今通常国会で審議中だ。新設が決まると、2024年度から住民税に1人当たり年1000円を上乗せ徴収される。新税を地域林業の活性化策を考えるきっかけにしたい。
新税は国が市町村経由で徴収し、私有林の面積などに応じて自治体に譲与する。見込まれる税収は年600億円。導入までの19―23年度は、森林環境譲与税から配分する。
放置された森の対策は待ったなしだ。日本の森林面積は約2500万ヘクタールで、国土の3分の2を占める。そのうち約1000万ヘクタールが人によって植えられた人工林。戦後、住宅需要を見込んで大量に植林されて伐採期を迎えたが、多くが適切に管理されていない。
個人所有の森林は83万戸と推定され、その9割が零細。木材価格が低迷し、切り出す意欲が沸かない。そもそも所有者に林業従事者が少なくなっている。
荒廃した森は水を蓄える力が衰え、水害や土砂崩れを招く。防災面からも人工林整備が急務となり、政府は新税創設を求めた。政府は市町村が所有者から森林を預かり、林業経営者に貸し出す「森林バンク」の新設も目指す。森を集約し、伐採作業を効率化する狙いだ。
新税、森林バンクとも利用は自治体に委ねられる。地域の森林再生はもちろん、林業従事者を育成する視点も求められる。
林業による地域振興で成果を上げている自治体もある。岡山県西粟倉村は2009年、加工から流通までを支援する会社を設立した。林業に活力が生まれ、起業しようと村に移住する人が現れるまでになった。
同じ岡山県の真庭市も地元企業と取り組む。地域で切り出した木材で建材を作り、残材を発電所やストーブの燃料にして市内で消費している。地域資源の地産地消で地元に利益を生んでいる。
日本にとって森林は数少ない資源だ。しかも地方に豊富にある。地元の官民が一体となり、森林の活用に知恵を絞ってほしい。
(2018/2/16 05:00)